【古代日本の食文化】廣野卓『卑弥呼は何を食べていたか』

歴史

こんにちは、アマチュア読者です!

今回ご紹介するのは、廣野卓『卑弥呼は何を食べていたか』です。

本書は古代日本の食生活について、古代食研究家の著者が木簡や古典作品などの歴史文献を読み解いて紹介しています。

卑弥呼、仁徳天皇、文武天皇の時代に人々は一体何を食べていたのか、歴史の知見に乏しくとも興味がある方は多いのではないでしょうか。

「食」というと食生活や食文化といった言葉を連想するように、食べることは人間にとって不可欠な営みです。

筋トレ、ダイエット、生活習慣病、アレルギーなど現代でも関心を集めているキーワードには「食」が関わっています。

本書の特徴は、古代日本というとっつきにくい歴史と「食」が掛け合わされているところにあります。

たとえば卑弥呼の時代というと3世紀前後のことで、その頃の世界を概観すると、強大なローマ帝国がようやく衰退を見せはじめ、中東ではパルティア王国を滅ぼしたササン朝ペルシアが勃興します。

中央アジアではクシャーナ朝もペルシアに滅ぼされ、ペルシアとローマの二大勢力が激突を繰り返します。

一方、朝鮮半島では中国東北部の高句麗が南下の気配を見せ、半島南部に弁韓(べんかん)、辰韓(しんかん)、馬韓(ばかん)が分立します。

そして強大な中国大陸では後漢が滅亡して、魏・呉・蜀三国が分立する「三国志」の時代を迎える時代です。

こうした状況の中、卑弥呼は魏の帝位継承のニュースにいち早く反応し、魏の国情に応じて実にタイミングよく使者を派遣しました。

このように書くと、いまから1700年以上前のことで遥か昔に感じてしまいがちですが、卑弥呼がアワビ、サザエ、タイをはじめとする高級魚介類やモモ、カキ、クリ、アンズなどの果物を楽しんでいたと知ると面白く感じられます。

その当時の日本(厳密にいえば倭の国)の食文化について数多くの文献を参考に考察されており、「食」に引きずられて歴史にも興味が湧き上がり、非常におもしろかったです。

日本の歴史に名を残し、学校の教科書に必ず登場する古代日本の重要人物が、焼き肉や鴨、スッポン、アワビ、エビ、カニ、チーズなど現代の日本人から見ても美味しいと感じる食生活を送っていたとわかると親近感が湧くものです。

同時に、古代日本では貧富の差が食生活におよぼす影響は現代の比ではなく、庶民がどれだけ過酷な日々を送っていたのかも本書を読むと気づかされます。

食文化をとおして日本の歴史を感じられるので非常におすすめです。

ぜひ読んでみてください!

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