【仕事でやる気の出ないあなたへ】虎尾達哉『古代日本の官僚』

歴史

こんにちは、アマチュア読者です!

今回ご紹介するのは、虎尾達哉『古代日本の官僚 天皇に仕えた怠惰な面々』です。

日本の官僚というと、頭脳明晰なことはもちろん、国のために忙しい毎日を過ごしているイメージが浮かびます。最近ではYouTubeで官僚の日常が動画配信されていて、その仕事ぶりを具体的に想像しやすくなっているのではないでしょうか。

では現代の官僚に比べて、古代の官僚はどうだったのでしょう?

わたしは、今も昔も官僚は真面目で国や地域に忠誠を誓って勤勉な日課をこなしていると思っていました。

しかし、本書を読むとそんな先入観が根底から覆され、その大きなギャップに驚きました!

無断欠席する官人

本書では古代の官僚(官人)の仕事ぶりを覗くにあたって、平安時代初期の元日朝賀儀(天皇への賀正の儀式)の様子を例として挙げています。

朝賀儀というのは、正月元旦に大極殿という朝廷の正殿に出御した天皇に、臣下一同が拝礼・拝舞して新年をお祝いする重要儀式です。

天皇にまみえる儀式といえば、緊張感みなぎる雰囲気の中で行われる有難い行事のはずなので、現代の常識で考えると「何としても出席しなければ!」と思いますよね。

ところが、当時の官人は無断欠席がおおぜいいたというのです。

しかもそれに留まらず、朝賀の儀式のあと、夕方に行われる宴会だけにはちゃっかり参加して、お土産をもらって帰る強者の官僚もいたそうです。

鋼のメンタル、鉄面皮、ちゃっかりもの…精神面で見習いたいような気にさえなってしまいます。

そういった官人を管理・監督する上司(太政官、式部省)は、重要儀式では点呼をとることで出欠を確認するので無断欠席者を把握できるはずなのですが、罰則が現代に比べて相当緩かったようです。

職務放棄する官人

古代の官僚は儀式をサボるだけではなく、当然遂行するべき職務も放棄していたといいます。

使者として任命を受けたにもかかわらず、派遣当日になって急遽辞退する官人。

天皇臨席の宴会で勅使として、天皇のお言葉を臣下一同に伝える役割が嫌でこっそり抜け出す官人。

名誉や気位の欠けたふるまいが横行していたことには驚きます。

古代日本は官僚制を中国(当時は隋や唐)から輸入しましたが、導入初期には大勢の官人が必要になり、必ずしも優秀でない人材を粗製乱造せざるをえない状況でした。

江戸時代のように道徳規範としての儒教思想が定着していなかったことも相まって、職務のサボタージュや怠惰な勤務姿勢が常態化していたのかもしれません。

現在に生きている私たちは、親の世代や祖父母の世代が経験してきた仕事観を程度の差はあれ、あたかも万古不変の規則かのように考えてしまいがちです。

が、本書を読むと「真面目に仕事をするのが当たり前じゃない時代があったんだな」と肩の荷が降ろせるかもしれません。

いまの常識も昔は非常識だったことがわかると、気持ちが楽になって元気が出ることってありますよね。

おわりに

今回は、虎尾達哉『古代日本の官僚 天皇に仕えた怠惰な面々』をご紹介しました。

職務のサボタージュが常態化していた古代日本の官僚たちの存在を知ると、日本人の仕事観が歴史的に紆余曲折を経て変容を遂げてきたことがわかります。

読み通してみて、「こういう人たちもいたのか!」と思って気持ちが上向き、仕事に対する視野が広がりました。

古代日本の官僚たちの仕事ぶりを現在に当てはめてみる面白さもあります。

ぜひ読んでみてください!

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