【中国のことがよくわかる】アンヌ・チャン『中国思想史』

思想

こんにちは、アマチュア読者です!

今回ご紹介するのは、アンヌ・チャン『中国思想史』です。

本書では中国の三千年にわたる長い思想的な格闘が、著者の手によって歴史的に順を追い、主題別に語られています。

紀元前2000年紀にテクストが登場してから、20世紀の中国を揺さぶった一連の革命の先触れとなる伝統破壊運動までの広大な範囲がカバーされており、全体で約660ページに及ぶ大著です。

古代中国では例外的に多様な思想が共存し、秦の始皇帝から漢の時代までには中央集権的で官僚制度を備えた帝国のシステムは確固としたものになりました。

紀元前後からはインドから伝わった仏教を中国化するプロセスが始まり、鳩摩羅什や玄奘の活躍で仏教のプレゼンスは向上し、8世紀から9世紀の唐でその影響は頂点に達します。

11世紀に入ると中国の伝統を徹底的に見直す時代になり、儒教の重要性がふたたび注目されます。

仏教が完全に中国化した16世紀以降、中国はキリスト教とヨーロッパの学問に際会し、西洋との接触が増えていった結果として本格的な侵略を受けるようになります。

ついには20世紀において、それまでの思想の伝統を否定する運動が活発化し、そこから新たな時代が始まるのですが、本書を通読するとこの伝統破壊が中国の歴史においていかに強烈なインパクトをもたらしたのかが切実に迫ってきます。

本書の卓越性は、著者による中国古典の徹底的な読み込みにあり、論語、老子、荘子、大学、中庸、朱子語類といった超一級の古典からの引用が数多く掲載されています。

著者がかみ砕いた古典の訳文は、読者の心の深いところまで響き渡ります。

本書の原典はフランス語で書かれていますが、10年以上の歳月をかけて日本語に翻訳されています。

中国思想に精通した3人の研究者によって丁寧に翻訳された文章は、わたしのような中国の歴史はおろか、哲学的知見になじみのない初学者にとっても非常に読みやすく感じられます。

家庭教育は中国文化、学校教育はフランス文化のなかで成長した著者ならではの視点で、中国の思想史がヨーロッパ的なまなざしで語られています。

本書を通読することで、表面的で断片的でしかなかった中国の思想が親しみやすいものになります。

本書の体系立てられた思想史を頭に入れることは、中国を理解するうえで非常に役立ちます。

ずっしりとした重厚な内容ですが、読み終わったときの充実感は他には代えられません。

是非じっくり読んでみてください!

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