【ナンバー2の世界】ケイト・アンダーセン・ブラウワー『アメリカ副大統領 権力への階段』

ノンフィクション

こんにちは、アマチュア読者です!

今回ご紹介するのは、ケイト・アンダーセン・ブラウワー『アメリカ副大統領 権力への階段』です。

アメリカの政治というと、大統領の顔や名前は思い浮かぶものですが、副大統領となるとどうでしょうか?

ナンバー1とナンバー2で社会的な認知度に著しい差が出るのは世の常ですが、アメリカの副大統領はいったい何をしているのでしょうか?

本書ではリチャード・ニクソンからマイク・ペンスまで、13人の副大統領が登場します。

このうち共和党は8人で民主党は5人ですが、大統領の代役という共通点があります。

大統領の地位を狙う多くの副大統領は、そのポストがすぐ手の届くところにありながら自分のやりたいことができず、大統領の命令に従って各地を飛びまわって演説をしたり、自分を押し殺してスケープゴートになったりとストレスフルな生活を送っている様子が本書から伝わってきます。

副大統領の役割

副大統領は、厳しい批判にさらされながらも軽視されるポストであり続けてきました。

第二次世界大戦の終戦直前にフランクリン・D・ローズヴェルトから大統領職を引き継いだハリー・トルーマンは、それまで副大統領を3ヶ月務めただけでしたが、「副大統領の仕事といえば上院の議事進行をすることと、あとは葬式に出るまで椅子に座って待っているだけ」と不満を口にしていたといいます。

とはいえ、副大統領の職務は時代とともに重要性を増してきているというのが本書を読むとわかります。

大統領と副大統領の関係は、それまでの軍隊の上司と部下の関係のように厳しい命令を与え、ひたすら忍耐し続けるものから、お互いを尊重して重要な政策について話し合う場を設ける間柄へと変わってきているのです。

もちろん、ドナルド・トランプ大統領とマイク・ペンス副大統領の関係のように揺り戻しがやってくることもありますが、バラク・オバマ大統領とジョー・バイデン副大統領のように職位を超えて家族に近い関係を築くこともできるようになっています。

本書で綴られるオバマとバイデンのあいだで強固な関係が構築されていく過程は読みごたえがあり、目頭が熱くなるシーンもありました。

セカンドレディー

大統領の夫人はファーストレディーと呼ばれますが、副大統領夫人はセカンドレディーと呼ばれます。

メディアへの露出も多く豪華なイメージのファーストレディーに対して、セカンドレディーには「ファーストレディーよりも目立ってはいけない」という鉄則があるといいます。

それ以外にも副大統領と同様に、セカンドレディーには多くの制約が本書で紹介されています。

たとえば、政府専用機を利用することができず、基本的に民間機やチャーター機での移動を余儀なくされます。

選挙運動においても、セカンドレディーは小規模で政治的重要性が高くない都市に派遣される傾向があります。

たとえセカンドレディーがファーストレディーよりも人前で話すのが上手だとしても、彼女が選挙戦で応援演説に駆り出される機会は多くないのです。

どの選挙でもメディアの反応に神経を使うことから、陣営はファースト・レディー以上に大きな場にセカンドレディーを送り込むことはしないといいます。

メディアにどう見られるのかは、政治の世界で非常に重要視されるファクターなのですね。

おわりに

今回は、ケイト・アンダーセン・ブラウワー『アメリカ副大統領 権力への階段』をご紹介しました。

日本で見るアメリカのニュースでは副大統領の話はほとんど聞こえてきませんが、本書を読むと歴代のアメリカ副大統領たちの苦悩や困難を垣間見ることができ、副大統領の系譜を時系列で追うことで彼らが果たした役割の変遷も手に取るようにわかります。

大統領というボスがいる以上、副大統領という立派な立場であってもサラリーマンと同じように上司と部下の関係からは逃れられず、社会に出て忙しく働く人達にとってはアメリカ副大統領が身近に感じられるかもしれません。

歴代副大統領の人となりも紹介されているので親近感が湧き、これからのアメリカの政治ニュースに興味が持てるようにもなれますよ。

ぜひ読んでみてください!

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