こんにちは、アマチュア読者です!
今回ご紹介するのは、慎改康之『ミシェル・フーコー 自己から脱け出すための哲学』です。
本書は哲学者ミシェル・フーコーの入門書です。
ミシェル・フーコーは、そのときの自分が正しいと思ったことを改めて見直し、徹底的に疑い、ときには前に書いたものと正反対のことを主張しながら自身をアップデートし続けた哲学者だと言われています。
本書のサブタイトルにある通り、「自己から脱け出すための哲学」を実践した人物なのです。
哲学についての本というと、どうしても「難しそう」「最後まで読み切れないよ」「絶対に眠くなる」と手に取るのをためらってしまう人が多いかもしれません。
今回は、ミシェル・フーコーの著作を一冊も読んだことがない私が本書を読んで感じたことをご紹介したいと思います。
書き出しで引き込まれる
本書のはじめにある「序章」の数ページで、ミシェル・フーコーという人物への興味がわいてきます。
彼は20世紀後半のフランス思想を牽引し、その個性は他にも増して強烈だったといいます。
- 剃り上げた頭、メタルフレームの眼鏡とともにすぐにそれとわかる容貌、甲高い声
- デモに参加したり街頭で演説したり、ときには逮捕されたりしながらも社会的闘争に関わる姿勢
- その性的指向にともなう苦悩や歓び、麻薬の使用、エイズとの闘いといったプライベートでも事欠かない逸話
これだけ読んでも「何かすごい個性を持った哲学者だな」と思いませんか?
さらに彼の著作を時系列に追っていくと、「この人はこんな考えをしている」という固定観念を持たれるのを好まなかったこともわかっていきます。
彼は1969年の著作『知の考古学』で次のような言葉を残しています。
私が誰であるかと訪ねないでほしい、私に同じままであり続けるようにと言わないでほしい、私は、おそらく他の多くの人々と同様に、もはや顔を持たぬために書いているのだ
ミシェル・フーコーは、自分自身から離脱することを可能にしてくれるものは「好奇心」であり、自身の思考を批判する作業を「哲学的活動」だと述べています。
こういう決めゼリフを読むと、まるで「これは自分に向けて書かれたメッセージだ!」と錯覚してしまいます。
『監獄の誕生』
本書ではフーコーの主要な著作である『狂気の歴史』『臨床医学の誕生』『言葉と物』『知の考古学』『監獄の誕生』『性の歴史』『知への意志』が紹介されています。
時間が流れに沿って、彼の思想が大きく変わっていったことが本書を読むとよくわかります。
その時代に生きていた人々であれば、「彼はいったい何を考えているのかわからない」と思っていたかもしれませんね。
これらの作品の解説を読んだなかで、一番印象に残ったのは『監獄の誕生』です。
18世紀末の西洋における身体刑から監獄へという処罰形式の変化がどのように起こったのかという問いを立て、フーコーはそれを権力のメカニズムの歴史的変容と関連づけることで解明しようとします。
その当時に考案された「パノプティコン」という建築様式を取り上げ、それが権力のメカニズムとどのように関わっているのかが考察されていて興味深いです。
現代では、監視社会をテーマにしたディストピア小説が人気ですが、それを深い洞察で、人と違う方法で解き明かそうとする姿勢からは学ぶことがたくさんありそうです。
フーコーから元気がもらえる
今回は慎改康之『ミシェル・フーコー 自己から脱け出すための哲学』をご紹介しました。
わたしのように、ミシェル・フーコーという哲学者について何も知らなくても楽しめる一冊です。
自分の思想に満足することなく、好奇心を絶やさずに自身をアップデートし続けたフーコーの生きざまを読むと、「自分も何かやってみよう!」と思えてきます。
フランスの現代思想に不可欠で、強烈な個性を持ったミシェル・フーコーに興味が湧いてくる本書をぜひ読んでみてください。
本書を読んで、フーコーに興味を持ったら彼の著作に挑んでほしいというのが著者の願いだといいます。
わたしは『監獄の誕生』にチャレンジしようと思います!
コメント