こんにちは、アマチュア読者です!
今回ご紹介するのは、社會部部長『あの国の本当の思惑を見抜く地政学』です。
著者はYouTubeチャンネル「社會部部長」を運営しており、一切の素性を隠したままで歴史・地政学の解説を動画配信し、人気を博しています。
この記事を書いている2026年1月16日時点で、動画投稿数51本、You Tube登録者数51.7万人の人気チャンネルです。
本書は混迷する世界情勢をより深く、本質的に理解する一助とするために一から執筆されました。
内容量は文字数にすると、社會部部長の20分の動画15本分が詰まっているといいます。
本書のために書き下ろしているため、動画では語られないより詳しい内容が体系的に読める作品です。
本書の特徴
本書の特徴として、社會部部長は次の2点を挙げています。
(1) 徹底的に地理に基づくこと
巷には地政学の本が溢れていますが、著者によるとそれらの多くは「地政学を謡っているのに地理を考慮していない」という欠点が見受けられるといいます。
「地政学」とは、文字通り「地理から政治を見る学問」であり、本書はこの観点に立脚して書かれています。
また、多くの地政学の本が最近の世界情勢を語るにとどまっているのに対して、本書は世界史も踏まえて100年前も100年後も通用するような普遍的な地政学的法則が披露されています。
(2) 学問的な理論に基づくこと
本書では、古典地政学というアルフレッド・マハンやハルフォード・マッキンダー、ニコラ・スパイクマンといったその分野では有名な学者の理論が土台となっています。
それぞれが唱えた理論を中心とした海と陸を軸とする国際政治の地理的解釈が平易な言葉で紹介され、そこからの議論の展開も学問的に評価されている文献がもととなっています。
また、本書には注釈が多く加えられており、巻末で詳細情報を確認できるようになっています。
社會部部長が参考にした文献が掲載されていて、その多くに社會部部長のかみ砕いたコメントが付記されていることからも、一般読者に向けた丁寧な読み込みの跡がうかがえます。
本書の構成
本書『あの国の本当の思惑を見抜く地政学』では、以下のような章立てで構成されています。
序章 今、地政学を学ぶ意義
第1章 アメリカ 強そうで弱い国
第2章 ロシア 平野に呪われた国
第3章 中国 海洋国家になろうとする大陸国家
第4章 日本 大陸国家になろうとした海洋国家
終章 地政学から学べること
海とかかわりが深く、国防を海軍に頼る海洋国家は、攻撃に弱く防御に強い。
陸とかかわりが深く、国防を陸軍に頼る大陸国家は、攻撃に強く防御に弱い。
大国と捉えられがちなアメリカ、ロシア、中国ですが、このような海と陸を軸とした地政学の観点から考えると、領土を守るための行動原理はそれぞれ異なります。
何気なくニュースを見ていると、経済事情だけをもとに国力を判断してしまいがちですが、どの大国も地理という「檻」から出られない「囚人」とすれば、何ができて何ができないかを知るにはまず檻の形を知らなければならないのだということがよくわかる内容です。
第4章では海洋国家である日本について、白村江の戦い、元寇、秀吉の朝鮮出兵、韓国併合、満州事変などが地政学的に考察されています。
海洋国家であり朝鮮半島という緩衝地帯に守られてきた歴史があったにも関わらず、日露戦争に勝利した日本は韓国を併合し、大陸にも手を伸ばして満州国を獲得しました。
国境線の長い地域を領土にしたことで、防衛にも注力する必要が生じ、中国内陸に侵攻すると境界線で紛争が起こり、紛争を解決するために緩衝地帯を奪うとまた紛争が起こるという悪循環に陥り、泥沼化したことは忘れてはならない内容だと思います。
「すべての地政学入門書の入門書」
地理的なメリットとデメリットを天秤にかけ、国益のために各国が採用した戦略について世界史を踏まえて理解できると、日々の世界情勢のニュースの解像度がより鮮明になり、世界に対する認識も変わってきます。
地政学の本でよく使われる道具として、「逆さ地図」と「超大国目線の勢力均衡図」があります。
逆さ地図は、東アジアの地図を逆さにしたもので、日本列島が中国の外洋への出口を塞いでいることがわかり、日本が中国にとって地理的に厄介な存在であることがよくわかります。
超大国目線の勢力均衡図は、1位の超大国が勢力を維持するために、3位以下の国と協力して2位の国を抑え込む構造を表したもので、国と国に挟まれてサンドイッチの具にならないために各国が知恵を絞ってきた歴史がよくわかります。
しかしながら、この2つの道具を単に使うだけでは、各国が目標を達成するための手段は説明できても、目的は説明できないと著者は語ります。
目的・目標・手段はともすると意味の違いがわからなくなってしまいますが、手段は目標を達成するための方法であり、目標は目的を達成するために必要な結果であり、目的とは最終的に実現したいことです。
つまり、手段とは「どのように達成するのか」、目標とは「何を達成するのか」、目的とは「なぜそれを達成したいのか」ということになります。
本書では手段や目標だけでなく目的までを射程に捉え、各国が目標を達成するための目的は何であったのかまでが意識的に解説されています。
入門書は、専門家が理解した内容を一般読者向けに説明したもので、ともすると常識として頭に入れておくべき大前提がすっぽり抜けてしまっているものが少なくありません。
本書はこの意味において、地政学的説明の根本に潜む原理を説明する「すべての地政学入門書の入門書」を目指して書かれているので、腹落ちしやすい内容です。
おわりに
今回は、社會部部長『あの国の本当の思惑を見抜く地政学』をご紹介しました。
これまで地政学の本をいろいろと読んできましたが、地理から政治を見る学問という視点がブレることなく、歴史を踏まえて一般読者に伝わる言葉で、過去から現在を貫く普遍的な内容の本として本書をおすすめします。
「すべての地政学入門書の入門書」の名に違わない作品だと思うので、この機会にぜひ読んでみてください!

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