【茶道の精神を学べるおすすめ思想書】『柳宗悦 茶道論集』

古典

こんにちは、アマチュア読者です!

今回は、民藝運動の創始者である思想家・宗教哲学者の柳宗悦が茶道について論じた柳宗悦 茶道論集をご紹介します。

『柳宗悦 茶道論集』とはどんな本か?

本書『柳宗悦 茶道論』は、民藝運動の創始者として知られる柳宗悦が、茶道とは何かをあらためて問い直した作品です。

茶と向き合ってきた先人たちが打ち立てた美の素晴らしさや、喫茶が茶道にまで高められた精神的系譜が深い洞察によって記されています。

生涯にわたって様々な媒体で発表されたエッセイや論考がまとめられており、茶道の根底にある精神にふれることができます。

一般に茶道というと、流派や作法が注目されがちですが、柳宗悦はその内奥にある茶道の精神を見つめました。

本書は、茶の作法や点前の手順を語る本ではありません。

茶の湯に宿る無意識の美や、日常に根ざした美意識が語られており、表面的な型としての茶道ではなく、その根底にある思想を探る内容となっています。

茶道の精神とは何か?

いにしえの優れた茶人は、ものを何事よりもまず見ていました。

眼とものの間に思想や嗜好、習慣を交えることなく「じかに」見る。

知を働かせることなく、考えるよりも前にものを見て、物そのものを見ていたのです。

彼らは茶道で物を見たのではなく、見たから茶道が起きたのだと柳宗悦は考えます。

しかもただ見ただけで終わったのではなく、ものを進んで用いることで彼らは美の真髄にふれることができました。

茶道は器を見る道であり、それを用いる道でもあります。

誰でも日々器を使って暮らしていますが、何を用いるのかで分かれ、どう用いるかでさらに分かれてしまいます。

用いるものは様々であり、用い方も色々ある中で、用いるべきものを用いない者がいる。

用いてはならないものを用いる者がいる。

何を用いるかに関心を寄せない者がいて、どう用いても気にかけない者がいる。

彼らを茶人と呼べるのだろうかと、柳宗悦は問いかけます。

優れた茶人たちの用い方は素晴らしく、ただ上手く用いたのではなく、用い方が型にまで高められました。

彼らが用いているように用いなければ、用いているといえないほどにまでしてしまったのです。

個人を越え、法で示したことこそ、彼らの異常な功績であると柳宗悦は彼らを褒め称えています。

個人の存在を越えた茶道の美しさは法の美しさであり、「茶」は個人の道ではなく人間の道となりました。

『茶道論集』の読みどころ3選

最後にたどり着くのは「渋さの美」

この世には様々なかたちの美があります。

かわいいもの、強いもの、派手なもの、粋なもの、それぞれが美しさの一つです。

しかし柳宗悦は、情趣が進めば行き着くのは渋さの美であると語ります。

幸運なことに、日本人はこの一語を知り抜いています。

日常的に使う域にまで到達しており、何気ない会話でこの言葉を無意識に入れるほどです。

しかもこの言葉で、自分の好みを省みることまでします。

どんな派手好きな人でも、渋さの美が深いことは理解している。

このことが日本人の持つ美の教養であり、すぐれた感性であると考える著者に深く頷く方は多いのではないでしょうか。

むずかしい漢字の熟語で表されているわけではなく、味覚から来た平易な「渋い」という言葉であるところにも奥深さが感じられます。

柳宗悦は、本書の中で渋さの美について繰り返し説いていますが、「渋さについて」と題したエッセイにとりわけ紙幅を割いています。

渋さという言葉の歴史的背景や仏教との関係を交えて外国人に向けて論じており、大変興味深い内容です。

民藝と茶道のつながり

いにしえの茶祖たちは、考えるよりも交わる美に重きを置いていました。

観念においてではなく、現実に即した生活において美に深く向き合いました。

親しさに美の本質を見たのです。

柳宗悦が惚れ込んだ、生活のために生まれた民藝に、彼らは美を見出していたのです。

ここに著者の茶祖たちに対する畏敬の念と深い共感が見て取れます。

自分の見る眼は曇っておらず、歴史に名を残す茶人たちに背中を押してもらって展開されているようにも感じられる論考も読みどころの一つです。

なお、柳宗悦が民藝についての思想をまとめた作品はこちらの記事で紹介しています。

ご興味のある方は参考にしてください。

【これは読んでほしい!】民藝運動の創始者 柳宗悦のおすすめ名著4選
日本の美意識や仏教観の本質を見極め、日本社会の文化的発展に尽くした柳宗悦の名著をご紹介します!

精神を忘れた茶道に対する警鐘

柳宗悦は、「茶」の病いと題する論考の中で、功罪相半ばしている茶道の歴史において弊害が著しくなってきた風潮を鑑み、敢えて茶道を批判しています。

茶道を賛辞する作品が注目される中で、誹謗中傷に晒されることを恐れず、著者は現状の茶道に対して考えていることを大胆に発表しました。

この姿勢は、茶道の未来を案じ、茶道の可能性を心の底から信じている者にしかとれないと思います。

すぐれた茶器を選び出す眼が養われず、経済力や権力に迎合し、不合理な封建制度を信奉する茶人があふれていては、本当の「茶」は見えなくなるというメッセージが強く感じられます。

『柳宗悦 茶道論集』はこんな人におすすめ

本書は次のような方に特におすすめです。

・茶道の「型」ではなく、「思想」を深く学びたい方

・民藝や日本文化の精神に興味がある方

・「茶道 本 おすすめ」などで探していて、初心者でも読みやすい思想書を求めている方

・静かに心を整える読書をしたい方

文章はやや硬い印象を受けますが、一文が短く、熟考された茶道論が凝縮されています。

読んで後悔することはないと思います。

おわりに 茶道の思想は奥深い

今回は、民藝運動の創始者であり、思想家・宗教哲学者の柳宗悦が茶道について論じた柳宗悦 茶道論集をご紹介しました。

流派や作法、形式が注目されがちな茶道において、その精神や美意識を問いかける本書から学べることは非常に多いです。

難しい言葉を用いず、平易な文体で綴られる著者の奥深い茶道論にふれてみたい方にはおすすめです。

この機会にぜひ読んでみてください!

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