【保守主義とは何かがわかる!】エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』

古典

こんにちは、アマチュア読者です!

今回ご紹介するのは、エドマンド・バーク『フランス革命についての省察』です。

本書は1789年に起きた歴史的大事件であるフランス革命を受けて、当時のフランス政治体制が先行き不透明な1790年に著者の考えが手紙の形でまとめられたものです。

エドマンド・バークは1729年(もしくは1730年)にアイルランドの首府ダブリン生まれ。

大学で法律を勉強し、文人として本格的なキャリアをスタートさせた後、政治家に転身し、アメリカ独立戦争からフランス革命という激動の時代に、行動する思想家として華麗な弁舌と健筆をふるいました。

本書はバークの友人であるフランスの若い貴族に向けて書かれた手紙です。

ドポンというこの紳士は、かつて父親とともにバークの邸宅を訪れ、バークの自由の擁護の哲学に感銘を受けていました。

この経験から、ドポンはフランス革命勃発直後にフランス国内の事態の進展をバークに報告し、彼に賛同を求めました。

バークはその要望への回答を手紙にしたため、フランス革命に対する彼の政治的見解を披露したのです。

おそらくその内容はドポンの期待を大きく裏切るものだったと思われますが、既存の政治体制を転覆させ、根本からつくり直そうとするフランスの姿勢を徹底的に批判しています。

本書の中で、バークは国力を評価する指標として、人口と富を挙げています。

人口が増加し、富が生まれるだけでなく流入もする国は長期的に考えると成長していくという考えは、現代のアメリカに当てはめるとわかるように普遍的です。

整備された道路や橋梁、水上交通の設備などのインフラ。

これまで生み出された各種の芸術、有能な政治家や軍人、法律家、神学者、哲学者などの知識人。

種々の要素を数え上げるとき、こういったバックグラウンドを持つフランスという国を一撃のもとに引き倒す行為は、果たして正当化されるのかをバークは本書で問いかけます。

バークは、旧知でありアメリカ独立戦争を言葉で強烈に推進したトマス・ペインから手紙を受け取っています。

コルセット職人の子供としてイギリスに生まれたトマス・ペインは、1776年に書いた主著『コモン・センス』によって、イギリスから不利な法律を課されて過剰な税金に苦しんでいたアメリカの人々の心に火をつけ一躍有名になり、世界中にその名が知られていました。

フランス革命直後に書かれたその手紙には、この革命が近いうちに近隣諸国にも押し寄せることを期待している内容が書かれていました。

バークはそれから1年が経たないうちに本書を出版し、フランス革命を徹底的に批判するのです。

『コモン・センス』については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

本書にはバークの政治哲学のすべての要素が凝縮され、「保守主義哲学のバイブル」「反革命の革命的な著作」といった評価がされているといいます。

通読すると、保守主義とはこういうことか!と腹落ちします。

現代では想像できないほど政治的、思想的な大転換期であった18世紀後半の世界の中で、本書のような作品を生み出した事実そのものが彼の理念を特徴づけています。

「抜本的」「根本的」という言葉が安易に使われる世の中では、本書の価値はいっそう高くなります。

ぜひ読んでみてください!

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