こんにちは、アマチュア読者です!
今回ご紹介するのは、岩根圀和『物語 スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代』です。
中公新書の『物語 ○○の歴史』シリーズにはおもしろい作品が多いですが、本書もそれに違わず物語のようにスペインの歴史を追うことができます。
スペインの歴史になじみのない方には特におすすめです。
本書では、複雑でひたすらに繰り返される王朝の交代劇や宮廷でうごめく数々の陰謀は取り上げられていません。
その代わりに、聞いたことはあるけれど実はよく知らない、スペインの国土回復運動(レコンキスタ)、レパント海戦、『ドン・キホーテ』の作者として有名なセルバンテスの生涯といった興味深い出来事について記述されています。
事実にもとづいた歴史をフィクションではなく、物語のように紡ぐことは作者の力量が問われますが、本書は飽きることなく最後まで読み通せます。
わたしは歴史に詳しいわけではないので、「レコンキスタって何か聞いたことあるなぁ」という程度の知見しか持ち合わせていなかったのですが、本書を読んでレコンキスタに至るまでの経緯をおもしろく学ぶことができました。
イスラム勢力が8世紀(711年)にイベリア半島に侵攻し、西ゴート王国が滅亡して以来、何百年ものあいだ支配されていたキリスト教徒がふたたび各地で息を吹き返し、カスティーリャ王国やアラゴン王国が独立して力を蓄えていきます。
1469年にはカスティーリャ王女イサベルとアラゴン王子フェルナンドが結婚したことで、その勢力は強大になり、1492年にグラナダを攻略してレコンキスタが完了しました。
これだけを見るとキリスト教徒とイスラム教徒のあいだで起こった長期にわたる宗教対立だと早合点してしまいそうになりますが、その間の人々の生活や学問を含めた文化の観点から捉えると、この時代があったからこそお互いに刺激を受けながら文化的発展があったのだとよくわかります。
歴史に詳しい方には頭の整理ができて面白い読み物になりますし、歴史をよく知らない方にとっても「読んでおもしろかった!」「何かスペインの歴史が少しわかった気がする!」という読後感を味わえる作品です。
ぜひ読んでみてください!
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