【これは読んでほしい!】ロシアの文豪トルストイのおすすめ名著5選

読書まとめ

こんにちは、アマチュア読者です!

今回は、ロシアの文豪トルストイのおすすめ名著をご紹介します。

作品が世に出た順に並べているので、トルストイの作品に興味がある方にとっては読む順番を考える上でも参考になるかと思います。

レフ・トルストイ(1828-1910)19世紀ロシア文学を代表する文豪です。

トルストイはロシアのヤースナヤ・ポリャーナに地主貴族の四男として生まれ育ちます。

カザン大学に入学しますが、遊興にふけり、成績は振るわずに中退。

この頃にジャン=ジャック・ルソーの作品を耽読し、生涯わたる影響を受けました。

従軍を契機として処女作『幼年時代』を発表し、『セヷストーポリ』でロシア文壇から賞賛を受けます。

戦地での任務から帰還後は領地の農民の教育事業に情熱を注ぎ、1862年の幸福な結婚を機に『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』を完成させます。

その後、思想の転機を迎え、原始キリスト教の考えに傾倒したことで私有財産を否定するようになり、夫人とは不和に陥ります。

1910年、80歳を越えたトルストイは家出をし、その10日後、鉄道の駅長官舎で波瀾の生涯を閉じました。

トルストイはヤースナヤ・ポリャーナで誕生し、生活し、そしてこの地に埋葬されており、トルストイの没後、地所は記念博物館となっています。

『セヷストーポリ』1855-1856年

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トルストイは青年時代には勇敢な軍人であり、死の危険が最も高かったセヴァストーポリでの防御戦をはじめとして、常人では経験することのない数多くの戦争に従軍しました。

セヴァストーポリは、1853年にロシア皇帝ニコライ一世によってトルコに宣戦されたクリミア戦争の激戦地の一つです。

トルストイは1854年、25歳のとき将校に昇進したのち、クリミア軍への転任を希望してセヴァストーポリに到着しています。

当時のトルストイは退屈な参謀部の生活に飽き足らず、より力強い活動、より強い感情が必要とされる任務を求めていたといわれています。

翌年の1855年にセヴァストーポリが開城されるとともに伝令使としてペテルブルクに派遣されるまで、一砲兵士官(少尉)として、非常に危険なこの要塞の防御戦に参加していました。

トルストイはこのセヴァストーポリでの実体験をもとに、本書を執筆しました。

1856年26歳のときに書き上げられた戦争小説であり、世界中の戦争文学の中でも高く評価され続けています。

本書が発表されると、当時のロシアで不動の名声を得ていた文豪ツルゲーネフの激賞をはじめ、ロシア文壇に一大センセーショナルを巻き起こし、トルストイはその名を早くも世に知らしめることになりました。

ニコライ一世の没後、帝位を継いだ皇帝アレクサンドル二世は、本書を一読して感嘆のあまり、本書を直ちにフランス語に翻訳させるとともに、トルストイを危険圏外へ逃がすように指示を出したと伝えられています。

本書セヷストーポリでは、著者のセヴァストーポリでの従軍経験をもとに、戦争における軍人の生活や心の内に秘めている虚栄心、名誉欲、恐怖心が、主観的な表現を抑えたうえで秀逸に表現されています。

戦争文学においては、戦争の悲惨さが前面に押し出されている作品が多く見受けられますが、本書は戦地に身をおく軍人の心情が恐ろしいまでに抉り出されています。

戦争を起こす人間がもつ本性がトルストイの慧眼によって暴かれ、驚嘆するほどの書きぶりには感動します。

時代を超えて読み継がれている理由が腹落ちする一冊です。

残念ながら現在絶版となっているため、中古品をご購入いただくか、図書館を利用いただくことで本書を楽しむことができます。

『トルストイ民話集 イワンのばか 他八篇』1885年

本書には、トルストイが民話や伝説をもとにつくり上げた9篇の短編作品がおさめられています。

1885年に刊行されました。

どれも読みごたえのあるものばかりなのですが、特に面白いのが冒頭のイワンのばかとそのふたりの兄弟です。

イワンのばかと呼ばれ親しまれている『イワンのばかとそのふたりの兄弟』は、イワンと2人の兄弟たちの生活をめぐる話で、悪魔たちからの誘惑にそそのかされて生活が立ちゆかなくなる兄弟たちと、「ばか」と呼ばれ続けながら上機嫌で父と妹を養うイワンが対照的に描かれます。

「イワンのばか」を読むと、いったい「ばか」というのは何を指す言葉なのだろうと考えさせられます。

頭を使うよりも身体を使って畑を耕し、家族を養うイワンは、悪魔から数々の嫌がらせや誘惑に見舞われますが、それらすべてに屈することなく寛大に機嫌よくふるまいます。

権力やお金に目がくらんだ兄弟とは対照的に、イワンはどこまでも自分の心に素直です。

損得勘定に無頓着で、困っている人は誰かれ構わず助けるイワンの姿は、社会の中で日々を送っている人間から見ると、あまりに純朴で現実を顧みない人物とみなされるかもしれません。

しかし、どんな人も目指している幸福について考えるとき、イワンの生き方から学べることは数多くあると思います。

何度読んでも飽きることがなく、年齢を重ねるほど大切なものが詰まっていることに気づける作品です!

『イワン・イリッチの死』1886年

『アンナ・カレーニナ』を完成させたあと、トルストイは人生に関する深刻な葛藤と宗教的更生を体験し、およそ10年のあいだ創作活動を中断していました。

新しい信仰が彼の中に根を張るようになり、芸術的創作意欲を回復したトルストイが書き上げた作品が本書イワン・イリッチの死です。

一官吏のイワン・イリッチが不治の病にかかり、肉体的にも精神的にも苦しみ、死や孤独に対する恐怖や人生の無意味さに絶望しながらも自分に折り合いをつけていく過程が描かれています。

イワン・イリッチが自らの人生に対して自問自答する本書の最後の数ページは圧巻で、頭にこびりついて離れなくなります。

本書を通読してからはじめの数ページを読み直すと、最初に読んだときと比較して文章の解釈が変わり、新たな発見もあります。

有名人でも成功者でもない一役人のイワン・イリッチと自分を重ね合わせてどう生きるべきかを考えるのも一興です。

『光あるうち光の中を歩め』1887年

トルストイは晩年、福音書に記されているキリストの教えにしたがって生きることを説きました。

本書はこの思想がわかりやすく伝わってくる小説です。

トルストイは1880年代の初めに本書の一部を書いていましたが、周囲のすすめにしたがってこの物語の執筆に立ち戻り、その出来に満足せずに何度も推敲をかさね、1887年にようやく完成したといいます。

舞台はキリスト生誕100年後、ローマ皇帝トラヤヌスが帝位に就いていた原始キリスト教時代のキリキヤという国です。

この国のタルソという町に、宝石商を父に持つユリウスキリスト教徒のパンフィリウスという同い年の青年がいました。

2人は同じ先生のもとで学んでいましたが、パンフィリウスの母親の都合で引っ越しが決まり、別れることになります。

その後、2人は折にふれて再会を果たしますが、その生活ぶりが対照的に描かれるところに本書の特徴があります。

俗世間にどっぷり浸かり、豪商として富を得るユリウスと原始キリスト教の世界に忠実に生きるパンフィリウス。

いったい人間は何を幸福と考えるのか、そのために何を追い求めるのか。

自分にとっての真の幸福に気づきながらも、言い訳がましく現状の生活に甘んじてしまう登場人物の気持ちに共感する方は多いのではないかと感じます。

次の言葉は非常に印象的で心に残ります。

彼はまたさらに、見知らぬ男が自分に対して、『この世の事を経験しつくしたら、その時にこそ行ったらいい』こう言ったのをも思い出した。

『だが、俺は浮世の生活をつぶさに経験したけれど、何一つ発見しなかった』

『光あるうち光の中を歩め』

『クロイツェル・ソナタ』1889年

本書は、トルストイがある俳優の談話で、汽車の中で無名の紳士が妻の不貞に苦しんでいる告白談を聞かされたというエピソードをもとに書かれたといいます。

1890年に発表されたクロイツェル・ソナタは、人間の心の内を包み隠すことなく赤裸々に描写し、当時の社会に非常に大きな反響をおよぼしました。

事件としては嫉妬に苛まれた夫が不貞の妻を殺害するという、現実にもありふれたものという印象を受けますが、犯行に及ぶまでに悪化していく夫と妻の関係、嫉妬という怪物の餌食になりながらも良心の呵責に悩む夫の心理的葛藤がじつに上手く描かれています。

ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」が男女関係におけるひとつの鍵になっていることから、本書のタイトルに採用されたのだと思われます。

200ページに満たない比較的短い作品ながら、そのインパクトは絶大です。

大河小説『ジャン・クリストフ』で有名な小説家であり伝記作家でもあったロマン・ロランは、クロイツェル・ソナタトルストイ作中の第一に挙げています。

ロマン・ロランが手がけた著名人の伝記の中でもトルストイの生涯は特に紙幅を割いて書かれており、本書を読めば文豪トルストイの世界が広がることは間違いありません。

作家としてというよりも、一人の人間としてのレフ・トルストイ像が浮かび上がってくる内容で、トルストイの小説に親しんでいる方はもちろん、「トルストイの小説というよりも人物に興味がある」とお考えの方にもおすすめの一冊です。

ロマン・ロランのおすすめ伝記については、こちらの記事を参考になさってください。

おわりに

今回は、ロシアの文豪トルストイのおすすめ名著をご紹介しました。

トルストイの作品を年代ごとに何冊か読んでみると、本当に同じ作家が書いた作品なのかと疑ってしまうほど、作風の違いに驚かされます。

それほどまでに著者の思想における転換期がいくつもあり、波瀾万丈にとんだ人生だったことが窺い知れます。

どの作品を読んでも独特の素晴らしさがあり、読んでよかった!と思えるものばかりです。

ぜひ読んでみてください!

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