こんにちは、アマチュア読者です!
今回はギリシャ悲劇詩人ソポクレスのおすすめ名著をご紹介します。
ソポクレスは紀元前5世紀に活躍したギリシャの悲劇作家であり、アイスキュロス、エウリピデスと並び称されるギリシャ三大悲劇詩人の一人に数えられます。
ソポクレスの90年におよぶ一生(前496/5~前406)は、ギリシャの燦然と輝く古典時代のほぼすべてをカバーし、祖国アテナイの栄誉・隆盛と歩みをともにしています。
ソポクレスは文人として、また公人としても後世が目を見張る足跡を残しており、そのこと自体が古典世界を体現しているともいえます。
ソポクレスがはじめて悲劇詩人として登場したのは、紀元前468年、27歳のときでした。
古代アテネの国家的な祭りの一つとして、毎年3月にディオニュソス神をまつる大ディオニュシア祭がおこなわれていました。
ディオニュソス神は別名バッカスとも呼ばれる酒の神で、同時に演劇の神でもありました。
この大ディオニュシア祭における悲劇競演で、ソポクレスは30歳ほど先輩にあたる悲劇の第一人者アイスキュロスを破って初優勝を飾ります。
それ以来、その創作活動は最晩年に至るまで衰えることを知らず、優勝回数は24回を数えたといいます。
ソポクレスは「この世のきわに至るまでは、何びとをも幸福とは呼ぶなかれ」(『オイディプス王』)という言葉を残していますが、晩年にはペロポネソス戦争によってアテナイは衰退の道をたどるものの、伝承ではソポクレス自身の生涯は最後まで幸福であったといわれています。
『オイディプス王』
太古のギリシャにおける都テバイを舞台とする超一級の悲劇作品です。
テバイはカドモスを建国の祖とし、その血筋を受け継ぐラブダコス家によって代々支配されてきた由緒正しき都でした。
時の王ライオスは、ポイボス・アポロンの神託によって「やがて生まれる子供の手にかかって亡き者にされる運命にある」と告げられます。
これを恐れたライオスは、王妃イオカステとの間にできた子が生まれるとすぐに、牧人であった家僕の一人に渡し、山奥に棄ててこの世から葬り去るように命じます。
そのあと時は経ち、ライオスは再びアポロンの神託を乞うべく、四人の供をつれて旅に出ますが、その途中で事件に巻き込まれて殺害されてしまいます。
逃げ帰った供の者が証言するには、犯行は盗賊によるものだといいます。
王を失ったテバイの人々は、悲嘆に暮れる間もなく、今度はスフィンクスによって危険にさらされます。
乙女の顔と獅子の姿を持つスフィンクスは難解な謎をうたい、答えられないテバイの人々の命を日に日に奪っていきました。
そこに遠くコリントスの王ポリュボスの館を出て放浪の旅を続けてきたオイディプスがやってきます。
オイディプスは卓越した知力によってスフィンクスの謎を解いてテバイの危機を救い、人々に推挙されてライオス亡き後のテバイの王位に就き、先王の妃イオカステを妻に迎えることになりました。
こうして平和で幸福な年月が経ち、4人の子供に恵まれたオイディプスでしたが、テバイは突如として疫病や不作などに見舞われ、危急存亡の秋に瀕します。
本書の本題はここから始まるのですが、「これを悲劇と呼ばずして何を悲劇と呼ぶのか」と感じるほどの凄まじい内容です。
自らの素性と一連の出来事に対する悲しみや怒り、絶望が渾然一体となった心情がこれ以上ない形で表現された人類の叡智であり、一生に一度は読むべき悲劇の最高傑作です!
読みやすい新訳として、光文社新訳文庫の翻訳もおすすめです。
『コロノスのオイディプス』
本書『コロノスのオイディプス』は、ソポクレスの死(前406年)後、紀元前401年に彼の孫によって初めて上演された遺作であり、ソポクレスの最後の作品といわれています。
オイディプスは『オイディプス王』で起こった事件によって国を追われますが、彼の息子たちは父のために何の努力もせず、ただ傍観するばかりでした。
しかし娘のアンティゴネーは放浪の旅を父と共に続け、乞食の生活をしながら父の世話をする苦労に耐えながら、アッティカのとある神の杜にやってきます。
この場所での神託によって、オイディプスは自分の死後になすべきことを自覚するのです。
本書は父の追放後、テバイの王位を争うオイディプスの2人の息子が、父がのちに与え得る恩恵を神託によって知り、彼を自分の側に引き入れようとする試みと、それに対する父オイディプスの怒りと拒絶から生じる葛藤が巧みに描かれています。
本書のラストシーンは劇的であり、最後まで読み応えがあります!
『オイディプス王』の続編として読むとおもしろさが倍増します!
『アンティゴネー』
本書『アンティゴネー』は、年代順では『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』に先立って、ソポクレスによって手がけられました。
しかし話の筋からすると、本書が最後の悲劇ということになります。
父オイディプスと共に放浪の旅を続けた娘アンティゴネーは故郷に戻ってから、王位を巡って争う兄弟の抗争に巻き込まれ、2人の戦死後に王座に就いた叔父クレオンから兄ポリュネイケスを死者としてまっとうに葬ることを反対されます。
もう一人の兄弟エテオクレスは、テバイを守って戦い討ち死にした身であるのに対して、ポリュネイケスは亡命から立ち戻った身であり、父祖の国と氏神の神の社に火を放って焼き払おうとしたため、墓に葬っても、泣き悼んでもならないと国中に布令がまわっていたのです。
そのような状況においてもポリュネイケスを葬ろうとするアンティゴネーに悲劇が迫りますが、物語はそれだけでは終わらないところに本書の秀逸さがあります。
おわりに
今回はギリシャ悲劇詩人ソポクレスのおすすめ名著をご紹介しました。
『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネー』は超一流の悲劇詩人ソポクレスが生み出した傑作です。
どの順番で読んでもおもしろいことは間違いありませんが、三部作の物語として捉えることもできます。
三作を続けて読むと話がつながり、おもしろさが何倍にもなるのでおすすめです!
一生に一度は読むべき人類の叡智です。
ぜひ読んでみてください!
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