こんにちは、アマチュア読者です!
今回は、伝説の吟遊詩人ホメロスのおすすめ名著『イリアス』『オデュッセイア』をご紹介します。
ホメロスの名のもとに伝わる二大叙事詩『イリアス』『オデュッセイア』はともにトロイア伝説を題材に、それぞれ「イリオス(またはイリオン)の歌」「オデュッセウスの歌」を意味しています。
イリオスは現在のトルコ北西部に位置する都市、オデュッセウスは二大叙事詩のどちらにも登場する知略縦横の英雄です。
数かぎりなく残るギリシャ神話、伝説の中でもトロイア伝説はとりわけ人気が高く、ホメロスの二大叙事詩の影響によるところが非常に大きかったと考えられています。
ホメロスは早くから伝説上の人物と考える向きがあったといいます。
本当に実在したのか、疑うほどに彼に関する資料が乏しいことがその理由です。
しかしながら当時のギリシャの社会事情を考えると、後世に「詩聖」と仰がれるホメロスも一介の叙事詩語りであり、作品を書き残すことに対する価値が希薄だった時代では致し方のなかったことでしょう。
ホメロスの伝記と称するものが写本によって、現代まで数篇伝えられています。
そのうち『伝ヘロドトス作 ホメロス伝』は今回ご紹介する『イリアス』に附録として収録されています。
ホメロスの二大叙事詩では名立たる英雄豪傑が活躍し、物語の規模が雄大で、素朴な自然の比喩を用いた絶妙な表現の数々には何度も圧倒されます。
「このような素晴らしい叙事詩は人類史上、極めて稀だ!」と断言したくなるほどの魅力があり、寝食を忘れて読みふけってしまいます。
『イリアス』
ギリシャ軍とトロイア軍のあいだで起きたトロイア戦争の末期を舞台に、ギリシャ神話に登場する錚々たる人物が活躍します。
勇将アキレウス、知略縦横の武将オデュッセウス、ギリシャ勢の中で並ぶものなき地位に身を置く王アガメムノン、その弟メネラオス、トロイア戦争の引き金となった彼の妻ヘレネと彼女を奪ったパリス、その兄でトロイア勢のなかで武勇の誉れ高いヘクトルはほんの一例です。
ギリシャ軍の内輪でアガメムノンとアキレウスのあいだで繰り広げられる舌戦ではじまり、
絶世の美女ヘレネをめぐるメネラオスとパリスの一騎打ち、ギリシャ軍のディオメデスの豪傑ぶりなど戦闘シーンがつづきます。
劣勢に立ったギリシャ勢は戦いから離れたアキレウスを何とかして連れ戻そうとしますが、アキレウスは数々の申し出をすべて拒絶します。
それでも戦局が気になるアキレウスは、親友パトロクロスを派遣して様子を探りますが、この行く末がきっかけになりアキレウスはトロイア軍に戦いを挑みます。
この壮絶なアキレウスの奮闘ぶりは物凄い読み応えで、ページを繰る手が止まらなくなる程です。
その凄まじさは、次の一文からだけでも垣間見ることができます。
それはあたかも乾いた山の深い谷間を、凄まじい猛火が荒れ狂って、深い木立が燃え、風が焔を巻き込みながら八方へ転がしていくかのよう、そのようにアキレウスが、槍を手に敵勢を追い討ちながら、鬼神の如く八方に駆け廻れば、大地は血の海となった。
本書の特徴としてもうひとつ挙げられるのは、トロイア戦争の英雄たちの戦いぶりがギリシャの神々の意志に左右されることです。
ゼウスやその妻ヘラ、アテネとアレス、アフロディーテといった神々には、それぞれ好みの人物がいます。
推しの戦士が活躍し、危機から遠ざかるように配慮しては神々のあいだで口論が起こる場面は、ギリシャ神話ならではのおもしろさです。
さらにその状況を当の英雄たちも理解していて、みずからの運命を受け入れるところに独特の死生観が感じられます。
書き言葉であるはずの文章から伝わってくる登場人物たちの生き生きとした姿に感動し、素朴な自然をモチーフにした絶妙な比喩表現は読者を唸らせます。
ホメロスが語り続けた言葉の力がいかに類まれであったかを思わずにはいられません!
『オデュッセイア』
本書『オデュッセイア』は『イリアス』の続編ともいえる作品です。
トロイア戦争が終結したあと、優れた頭脳と武勇を備えた英雄オデュッセウスは故国イタケに帰る途中で嵐に襲われて漂流し、以後10年の長きにわたって数々の困難を乗り越えながら冒険を続けます。
隻眼の巨人キュプロプスや魔女キルケ、人を狂わせる美声を持つ女神セイレーン、海に待ち受ける怪物スキュレ、カリュブディスなど、行く手を阻む強敵に対するオデュッセウスのとる冷静沈着で勇気ある行動に、読者側が一喜一憂させられます。
本書では冒険の途中で有名な「トロイの木馬」の話に少しだけ言及する場面があり、トロイア伝説の影響がここにも見られます。
オデュッセウスの冒険における怪物たちとの戦いの様子は、紀元前のギリシャでは日常的に使われる壺や甕、食器のデザインとして描かれています。
フェリックス・ギラン『ギリシア神話』という作品には多くの写真が掲載されているので、興味のある方にはおすすめです。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
オデュッセウスが不在のあいだに忍び寄る多くの求婚者に対する美人の妻ペネロペイアの貞淑なふるまいと息子テレマコスの奮闘ぶりも本書の魅力の一つです。
もちろん本書は単独でも楽しめますが、『イリアス』でのオデュッセウスの活躍や、他の登場人物との関係を理解しておくと面白さがさらに増します!
おわりに
今回は伝説の吟遊詩人ホメロスのおすすめ名著『イリアス』『オデュッセイア』をご紹介しました。
ヨーロッパ文学の源泉とも仰がれるギリシャ最古の大英雄叙事詩は、西洋のみならず人類が生み出した文学の最高傑作といっても過言ではありません。
この機会にぜひ読んでみてください!
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