【情熱がほとばしる】トマス・ペイン『コモン・センス』

古典

こんにちは、アマチュア読者です!
今回ご紹介するのは、トマス・ペイン『コモン・センス』です。

本書はアメリカの独立を推進したパンフレットで、アメリカがイギリスから独立するにあたって人々を鼓舞し、励ました歴史的著作です。

原文は60ページほどですが、その影響はアメリカ国内のみならず、ヨーロッパやアジア、アフリカまで広がり、いまや世界中で読み継がれています。

トマス・ペインの生涯

トマス・ペインは、1737年1月29日にイギリスのノーフォーク州で、コルセット職人の子供として生まれました。

長じてコルセット製造、収税吏の仕事をしていましたが、いずれも失敗しました。

結婚生活も不幸であって最初は死別し、2度目は離婚するに至って上手くいかず、37歳のときに彼は完全に落伍者になり果ててしまいました。

しかしそのとき、ベンジャミン・フランクリンと出会い、彼の勧めでアメリカに移住します。

そして1776年1月に『コモン・センス』を書いて、世界に名を知られるに至りました。

「時は金なり」という有名な言葉を生み出し、アメリカを代表する政治家であったベンジャミン・フランクリンと知り合うことは、トマス・ペインにとっては多大なる恩恵であったことでしょう。

印刷業に始まり、好奇心の赴くままに様々な発明をし、政治家としてもアメリカに大きな影響を与えたベンジャミン・フランクリンの生涯は『フランクリン自伝』に詳しく書き残されています。

トマス・ペインはその後、義勇兵となって独立のために戦い、『アメリカの危機』(本書に収められています)を出版して兵士を鼓舞しました。

さらに外務委員会書記として対外折衝にも当たりました。

『コモン・センス』で名声を得ただけで終わらず、独立のために行動して影響を広めたところはすごいですよね。

しかもアメリカ独立した後も彼の行動はとどまることを知りませんでした。

トマス・ペインはイギリスに帰りましたが、今度はフランス革命に立ち会うことになります。

彼はエドマンド・バークの名著『フランス革命の考察』に反論し、『人間の権利』を書いて革命の原理を擁護しました。

トマス・ペインは旧知であったバークに手紙を書き、フランス革命の影響が近隣諸国にも及ぶことを期待していました。

それに対して、バークはフランス革命を保守主義の立場で徹底して批判したのです。

『フランス革命についての省察』については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

トマス・ペインは『人間の権利』を書いて革命を推進する動きをしたために大逆罪で告発され、命からがらフランスに逃れます。

彼はたどり着いたフランスで国民議会から市民権を与えられ、憲法制定委員にもなります。

しかし今度はルイ16世の処刑に反対したために、ジャコバン派に捉えられました。

ジャコバン派はフランス革命期の政治結社で、当時のフランス王政を強烈に敵視していたのです。

彼は死刑を覚悟していましたが、アメリカの大使ジェームズ・モンローに助けられて出獄します。

ジェームズ・モンローは、のちに第五代アメリカ合衆国大統領に就任する大人物です(在任 1817-1825)。

その後も彼のバイタリティーは衰えず、『理性の時代』を書いて理神論に基づく第三の革命を主張しました。

しかしナポレオンの独裁が始まるに至ってこれを嫌い、再びアメリカに渡りました。

そしてニューヨークで不遇な晩年を送り、1809年6月8日に73歳の生涯を閉じました。

これまで見てきたとおり、トマス・ペインは1776年まで全く無名の人物に過ぎませんでした。

社会の片隅に追いやられて、到底浮かび上がることのできないような人間だったのかもしれません。

それがはからずも『コモン・センス』によって一躍有名になり、歴史の檜舞台に登場したのです。

アメリカとイギリスの関係

独立前のアメリカは、王政を敷くイギリスから不利な法律を課され、特に過剰な税金に苦しんでいました。

トマス・ペインは、この状況をロジカルに説明し、現状を打開するにはイギリスからの独立しか道は残されていないと力説します。

当時のアメリカには、イギリスと和解することでより良い社会を築くことができると考える議員が多くいました。

しかし、トマス・ペインは、イギリスの植民地である限りは一方的な要求を押し付けられ、それは全てイギリスの国益のために考え出されたものであると批判します。

本書を読んでいて、アメリカとイギリスの関係を、日本とアメリカの関係で読み変えるとどうなるのか考えていました。

軍事的属国である日本がアメリカから本当の意味で独立するとなると、何が必要で、結果としてどのようなことが起こるのかを考える時間は有意義でした。


宗主国と植民国、主権国と属国、あるいはパワーバランスが偏った同盟国関係など、本書のアメリカとイギリスの関係を自分の置かれている立場で考えるとき、トマス・ペインから学ぶべきことはたくさんありそうです。


本書『コモン・センス』には、ロジカルな文章がほとんどを占めていますが、独立国としてのアメリカを強く求める著者の情熱が行間から読み取れるので、途中で飽きることなく読み進められました。

本書からほとばしる情熱によって、当時のアメリカ国民は独立に向けて大きく心動かされたのでしょう。

おわりに

今回はトマス・ペイン『コモン・センス』をご紹介しました。

アメリカ独立を推進した著者のロジカルな文章と行間からほとばしる情熱が魅力的です。

現代の読者でも、気持ちが高まる名言に感銘を受けるはずです。

このパンフレットによって、それまで無名だったトマス・ペインが一躍有名になった本書をぜひ読んでみてください!

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