【入門書に最適】チャールズ・ラム、メアリー・ラム『シェイクスピア物語』

古典

こんにちは、アマチュア読者です!

今回は、チャールズ・ラム、メアリー・ラム『シェイクスピア物語』をご紹介します。

本書は19世紀のイギリスにおいて、チャールズ・ラムと10歳年上の姉メアリー・ラムによって編纂された児童向けの文学作品です。

原題”Tales from Shakespeare”のとおり、シェイクスピアの戯曲を子どもにもわかりやすい物語形式で書かれています。

チャールズが悲劇を、メアリーが喜劇を担当し、経済的に厳しい状況の中でも揺らぐことのない姉弟の深い絆が結実した物語集です。

1807年に初版が刊行されて以来、200年以上にわたって世界中で愛読されている児童文学の名著であり、シェイクスピアに興味はあるけれど、何から読んでいいかわからない!と思っている大人にもおすすめできる作品です。

シェイクスピアの原作は実際に手に取るとわかるように、難解な中世英語や独特の詩的表現に満ちており、大人でも読むのに骨が折れるほど。

ましてや、当時の教育水準では子どもが親しむには困難な状況でした。

そこで子どもでも楽しめる形でシェイクスピア作品を提供しようと試みたのが本書『シェイクスピア物語』であり、教育的・文化的意義は非常に高く評価されています。

岩波少年文庫からも刊行されています。

構成と内容

『シェイクスピア物語』シェイクスピアの38編の戯曲(合作を含む)から、ラム姉弟が20編を選んで物語に改作しています。

各物語は五幕の原作を要約してあるので、一見して読みやすく思えますが、一つひとつの物語は小さな宇宙であると言っていいほど濃い内容を持っており、学術的な論文が数多く書かれていることも頷けます。

読みやすく編纂されていますが、読み飛ばさずに一話ずつ腰を据えてじっくりと味わうことをおすすめします。

所収されている20編の作品をジャンル別に、発表年代順に並べると以下の通りになります。

喜劇

「まちがいの喜劇」

「じゃじゃ馬ならし」

「ベローナの二紳士」

「真夏の夜の夢」

「ベニスの商人」

「から騒ぎ」

「お気に召すまま」

「十二夜」

「終わりよければすべてよし」

「しっぺい返し」

 

悲劇

「ロミオとジュリエット」

「ハムレット」

「オセロー」

「リア王」

「マクベス」

「アテネのタイモン」

 

ロマンス

「ペリクリーズ」

「シンベリーン」

「冬物語」

「あらし」

 

このうち、悲劇6編はチャールズが書き、あとの14編および「まえがき」はメアリーが書いています。

メアリーは精神が不安定な状態が続いていたため、心優しいチャールズは嫉妬に端を発する殺人や陰謀など、激しく陰鬱な場面の多い悲劇を担当させたくなかったのだろうと言われています。

『シェイクスピア物語』には、四大悲劇と呼ばれる「ハムレット」「オセロー」「リア王」「マクベス」も漏れなく収められています。

作品紹介で喜劇・悲劇と区分していますが、言葉の定義としてヨーロッパ文学の伝統では、はじめ不幸だった主役(プロタゴニスト)が最後に幸福になれば喜劇、はじめ幸福だった主役が不幸になって通例命を落とす場合が悲劇です。

そして、喜劇の中で特にいちじるしくロマンチックな特質をもったものにロマンスの名称が与えられています。

文体と語りの特徴

本書『シェイクスピア物語』の最大の特徴は、簡潔で感情に流されない抑制の効いた散文で、シェイクスピアのプロットやドラマチックな場面を損なうことなく再現している点にあります。

たとえば「ハムレット」では、主人公のハムレットが父王の死と母親のふるまいに対する苦悩や父の亡霊を見たあとの心的葛藤、そしてその後の悲劇的結末がわかりやすく書かれていながらも、原作の哲学的な深みが残っている点が秀逸です。

なお、「ハムレット」についてはロシアの文豪ツルゲーネフが『ハムレットとドン・キホーテ』という名著の中で興味深く考察しているので非常におすすめです。

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こちらの記事も参考にしてみてください。

【これは復刊してほしい!】ツルゲーネフ『ハムレットとドンキホーテ』
ロシア文学を代表する文豪であるツルゲーネフの洞察が光るハムレットとドン・キホーテの比較論です!

 

おわりに

今回はチャールズ・ラム、メアリー・ラム『シェイクスピア物語』をご紹介しました。

本書は主要な20作品の戯曲をわかりやすい物語に編みなおした作品集です。

ウィリアム・シェイクスピアの超一流の古典文学作品になじみがない方で、まずはシェイクスピアに親しんでみたい!と考えている方には手に取っていただきたいです。

この機会にぜひ読んでみてください!

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