こんにちは、アマチュア読者です!
今回はベンチャー企業経営者を経験し、大学の学長にもチャレンジする出口治明のおすすめ名著をご紹介します。
著者は30年以上にわたって保険会社に勤めたあと、還暦で起業し、世界初のネット生命保険会社「ライフネット生命保険」を立ち上げました。
これだけでも十分に特筆すべき経歴ですが、そのあと国際公募による選考により、APU(立命館アジア太平洋大学)の学長に就任されています。
著者が「タテヨコ思考」と呼んでいる時間軸と空間軸を自在に使ってシンプルに語られる論考はものごとの本質を突き、「数字・ファクト・ロジック」で客観的に説明される内容は読者を唸らせます。
著者がこれまで読んできた本の数は一万冊を超えます。
著者がどのように本を選んでいるのか、どんな本をおもしろいと感じるのか興味のある方はこちらの動画がおすすめです。
これからご紹介する著者の作品を読めば、膨大なインプットと質の高いアウトプットというのはどういうものなのかがよくわかるはずです!
『人生を面白くする本物の教養』
本書は「教養」をテーマにした作品です。
教養という言葉はさまざまな解釈がされますが、著者は「教養とは、人生におけるワクワクすること、面白いことや、楽しいことを増やすためのツールだ」という一言に尽きると語ります。
今よりもワクワクする人生、より面白い人生、より楽しい人生を送り、悔いなく生涯を終えるためのツールと聞けば、興味が湧きますよね。
「知識は手段であり、考える材料を増やして自分の頭で考えることが教養の本質だ」という著者の言葉は、どのライフステージにいる方でも人生を良くするキーワードが教養なのだと教えてくれます。
年齢を重ねても生きているのは、人生で学んだ様々なことを次の世代に伝えることによって、次の世代をより生きやすくするためなのです。
本書の第7章と第8章では、稀代の教養人である著者が時事問題を実際に読み解いていきます。
「本音は何か」「動機は何か」という観点で、広大な知的平野から生み出される著者の見解には驚くばかりです。
読みやすいうえに学ぶことの多い、おすすめの一冊です。
『仕事に効く教養としての「世界史」』
仕事と世界史がどのように結びつくのか疑問に思われるかもしれませんが、「将来、何が起こるかは誰にもわからないけれど、悲しいかな、教材は過去にしかない」という事実があります。
人間がつくり上げてきた歴史に中に21世紀をうまく生きるためのヒントが見つからないだろうかという問題意識から本書は生まれたといいます。
日本を直接取り上げることはせず、世界全体を俯瞰して見る参考となる戦争や宗教を主軸に、数多くの歴史エピソード盛り込まれています。
世界史には登場するさまざまな国の滅亡や個人の失敗、時代に翻弄される人々の生きざまが数限りなく現れます。
「負け戦をニヤリと受け止められるような、骨太の知性を身につけてほしい」という著者の願いが込められた本書の重厚さは並大抵のものではありません。
本書はシリーズもので、Ⅰ巻とⅡ巻があります。
I巻は最初に「歴史の父」とよばれるヘロドトスと元米国国務長官のヘンリー・キッシンジャーの言葉を引用して歴史の魅力が伝えられます。
著者が歴史を勉強していたことで実際に仕事で役立ったエピソードも紹介され、読み進めたい気持ちに駆り立てられます。
本書を通読すると、世界史の中の日本史という視点が、いかに世界を面白くみるうえで大切なものかを実感できます。
Ⅱ巻は大航海時代のコロンブス交換によって世界が均質化していった16世紀という時代にスポットを当てた書き出しではじまります。
ハプスブルク家、イスラム世界、インド、エジプト、中国(唐と宋)、ルネサンス、ラテン・アメリカ、アフリカ、プロイセンの成り立ちが著者の言葉で語られます。
地域ごとの歴史が噛み砕かれて解説されており、その秀逸さには感動します。
『生命保険とのつき合い方』
社会人になって、ふと生命保険のことを考えた人が「これ一冊を読めば安心して生命保険を買うことができる」ことを目指して著者が執筆したのが本書『生命保険とのつき合い方』です。
1750年にロンドンで誕生した金融商品である生命保険は、セーフティネット(医療や年金などの社会保障)という公的な安全網の「補完」としてプラスアルファのサービスを提供するのが本来の役割であり、「代替」するものではないということに目を開かされます。
「リスク」や「ファイナンス」といった言葉の定義も明確になされているので、難しそうな横文字に悶絶することなく読み進められます。
保険とは、偶然に発生する事故によって生じる損失に備えてみんながお金(保険料)を出し合い、事故にあった人に給付を行う仕組みであり、利益を得ることとは関係ないのだと腹落ちします。
生涯で多くの支出が必要になる保険を勉強する上で、本書はおすすめです!
本書にはコラム「生命保険の歴史」が掲載されているので、歴史が好きな方も楽しんで読むことができると思います。
『「全世界史」講義』
歴史を日本と世界に分けるのではなく、著者のフラットな視点で人類の歴史が描かれています。
二十万年におよぶ人類の歴史の中で、およそ5500~5000年前からは文字資料が残っています。
絵や考古学的遺物をもとに考えるのは類推に陥りやすく、文字が伝える情報はそれらと比較して圧倒的に多いため、本書では文字資料が残っている紀元前3000年から現代までが扱われています。
世界の歴史が時系列に説かれているので、断片的な知識だけが頭に残っている方にとっては歴史の大きな流れをつかむのに重宝すると思います。
私のように歴史になじみのない方も、通読することで「日本が世界から注目されるようになったのは歴史的には最近のことに過ぎない」ことを腹落ちするはずです。
本書は「Ⅰ 古代・中世編」「Ⅱ 近世・近現代編」の二巻に分かれており、ⅠはBC3000年~AD1400年まで、Ⅱは1401年~2015年が対象範囲です。
Ⅱの巻末には、著者が本書を刊行するにあたって参考にした文献が掲載されています。
複雑な世界の歴史を平易な言葉で語る著者がこれまで読んできた本のリストは、腰を据えて歴史を勉強したい方には大変参考になるはずです!
『「都市」の世界史』
稀代の読書家である著者が時間の流れに沿って、わかりやすい言葉で各都市の歴史を語ってまわるのが本書の特徴です。
都市の歴史を知ることは、文明の歴史を知ることでもあります。
いまから約1万2000~3000年前に人間は農耕を始め、現代の家族に似たかたちで農地の近くに住まうようになりました。
この頃の狩猟採集、農耕牧畜いずれも大集団の人間が一ヶ所に集まって生きる都市をまだ必要とはしていませんでした。
都市が生まれてくるのは、余剰が出るくらいの農産物が生産され、それを私有財産とする人々の登場を待たなければならず、それはいまから5500年くらい前、メソポタミア南部のシュメール都市群でのことでした。
富や権力を持つ人々は、自分の余剰生産物が盗まれない場所で生活する必要があります。
そのため、自分が持っている地域を城壁で囲い、その中で財産管理をして過ごすようになりました。
生産者とは離れて住み、それまでになかった違いが生まれ、その違いは階級のある社会をつくり、貧富の差を生みます。
そして、生活に余裕を持つ階級は知的活動の産物でもある文明を生むようになりました。
本書は第1章のイスタンブルから始まり、デリー、カイロ、サマルカンド、北京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ベルリン、ローマと海外旅行の候補に挙がるような都市が多く扱われます。
本書を読み、都市の歴史を知ることで訪れたときのおもしろさが倍増します!
『おしえて出口さん! 出口が見えるお悩み相談』
本書は仕事、教養、恋愛・結婚、人間関係、人生といった誰もが悩みがちなテーマについて、著者が一問一答で回答するかたちをとっています。
著者は数々の悩みに目を通して、「常識(平均)の怖さ」を感じたといいます。
みんな顔がそれぞれ違うように、考え方が違って当たり前だということは、ともすれば忘れられがちです。
人やまわりに合わせようと考えすぎて悩みが生まれてしまうこともありますが、悩みはその先に進むきっかけになると著者は言います。
「面接でアピールできるキャリアがない」
「2、3年後の自分が想像できない」
「読書を仕事に活かすには、どうすればいい?」
「結婚や出産に明るい希望が持てません」
こういった様々な質問に対して、著者の視点で考える人生論は一読の価値があります。
著者がおすすめする作品も多く紹介されているので、おもしろい本を思いがけなく見つけられることも請け合いです。
『「教える」ということ』
「教える」とは、相手にわかってもらうこと、相手に腹落ちしてもらうこと、どんな人に対しても真意を伝えることだと著者は語ります。
教える立場に立つのなら、相手のレベルに応じて、相手に伝わるように、相手が理解できるように、わかりやすく話す(書く)ことが絶対的な条件になるといいます。
親として、教師として、上司として、あるいは人生の先輩といった様々な立場の人に対して、著者が腹落ちした「教えること」の本質がわかりやすく説かれています。
本書では教え方のテクニックが細かく紹介されているわけではありません。
何を教えるのかという視点で、大局的にものごとを考えた著者の教育論です。
著者いわく、子どもに教えることは2つしかないといいます。
ひとつは「生きるための武器」を教えること、もうひとつは、いつでもどこでも自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見をいえるように育てることです。
「生きるための武器」については、社会を生き抜くための「7つの武器」として、「国家」の基礎、「政府」の基礎、「選挙」の基礎、「税金」の基礎、「社会保障」の基礎、「お金」の基礎、「情報の真偽」を確かめる基礎を知ることの重要性が説明されています。
政治の投票率が上がらないのは、政治の基礎を教えてもらえていないからで、「教えてもらえない→知らない→不安になる→行動しない」という負のスパイラルに囚われてしまいます。
選挙に行かないのは、極論すれば「税金がどう分配されても、年金を払ってもらえなくても、医療費負担が10割になっても、決して文句はいいません」という意思表示だと聞くと、「選挙に行かないとやばい」と思えますよね。
こういった政治や選挙を正しく理解する武器を与えることが「教える」ことに含まれるのだという考えは納得できます。
考える力については、著者が数々の作品で一貫して述べているように「人・本・旅」だと主張しています。
いろいろな人に会い、たくさん本を読んで、行ったことのないところ(=現場)に足を運ぶこと。
その理由と上手くいく方法については本書で解説されています。
本書には著者が学長を務めるAPUの入学式で新入生に配布される推薦図書一覧が掲載されており、「どんな本を読んだらいいのかわからない」方には参考になります。
特別対談として、立命館慶祥中学校・高等学校校長の久野信之氏、生物心理学者の岡ノ谷一夫氏、教育社会学者で『教育格差』で新書大賞2020の3位に輝いた松岡亮二氏との議論が掲載されています。
日本の教育の問題点が、「自ら学ぶことを、教えようとしている」矛盾した考え方にあること、アイディアで勝負する社会における高等教育の重要性、「学ぶことは楽しい」と思える仕組みづくりなど、おもしろいトピックが目白押しです。
『自分の頭で考える日本の論点』
著者は物事を考えるとき、特に大切にしているのは「タテ、ヨコ、算数」の3つであるといいます。
タテ、すなわち昔の歴史を知り、ヨコ、世界がどうなっているのかを知り、それを算数、つまり数字、ファクト(事実)、ロジック(論理)で裏付けていく。
そうすることで、メディアやSNSを追いかけているだけでわからないことが見えてくるというのが著者の見解です。
新型コロナウィルス感染症のパンデミックのような深刻な時代の時ほど、デマや暴論も大量に発生します。
新型コロナのパンデミックでも「インフォデミック」(主にネット上で噂やデマを含めた大量の情報が氾濫し、現実社会に影響及ぼす現象)と呼ばれる事態になりました。
本書では、日本や世界が直面している問題の中から、人々のあいだで意見が分かれている「論点」が22個選び出され、各論点について、問題の背景やどのような意見があるかなど、基礎知識を先に解説した上で、著者自身はどう考えるのかという順番で話が進んでいきます。
本書で扱われている論点は、短期的な視野で考えるには複雑な問題をはらんでいるものばかりです。
日本人の働き方、地球温暖化に対する人類の取り組み、憲法9条を改正すべきか否か、少子化は問題なのか、人間の仕事はAIに奪われるのか。
こういった一筋縄では回答するのが難しい様々な論点に対する著者の見解は「数字、ファクト、ロジック」に裏付けられているものばかりで、「自分の頭で考える」とはどういうことなのかは本書を読むとよくわかります。
各論点に対する著者の思考のプロセスを追体験することによって、読者の考える力が鍛えられることは間違いありません。
同時に、各論点の基礎知識が頭に入っていなければ間違った方向に論理が進んでいく可能性が高まることにも納得でき、知識も考える力も必要なことを感じさせられ、頭に刺激が入ります!
『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』
本書は著者と、社会学者の上野千鶴子氏の対談本です。
同い年で大学も同じだったおふたりの対談は、日本の業界構造や日本型の経営体質についての話を土台に、変動する社会でどのように働いたら幸せになれるのかがメインテーマになっています。
本書はコロナウイルスが猛威をふるっている時期に出版されました。
働き方を大きく変えざるを得ない環境の中で、おふたりが語り合い、残した言葉は長期にわたってリーダブルな内容です。
生産性の向上やテレワークの是非、日本型経営の特徴、仕事における心がまえなど、ビジネスパーソンにとっては働き方について立ち止まって考えさせられる、珠玉の言葉が詰まっています。
以下はほんの一例です。
「相手の信頼を裏切らないように、丁寧に仕事をする」
「信頼が蓄積するような仕事をする」
「仕事は人生の3割」
「言うは易く行うは難し」であり、仕事観に答えはありませんが、人生において限られた時間をどのように使うのかを問われているような気持ちになります。
著者の次の言葉は印象に残るはずです。
自分の頭で考えて、自分の言葉で言いたいことを言って、機会があればチャレンジするのが幸せな人生だ。
『教養としての「地政学」入門』
本書を読めばわかるとおり、広大無辺の知的バックグラウンドから展開される著者の「地政学」入門は、地政学という言葉の定義(一般的には政治現象と地理的条件との関係を研究する学問)を皮切りに、古今東西の歴史が地政学のケーススタディーとして紹介されています。
著者は本書の冒頭で、「できれば地球儀を用意してください」と呼び掛けています。
3次元の球体としての地球をイメージすることで、地政学はより親しみやすくなります。
平易な文章で書かれていますが、内容は重厚で読み応えがあります。
複雑に思える歴史的経緯も、著者の頭で整理されると非常にシンプルに感じられ、教養という言葉の意味が本書の行間からにじみ出ています。
国は引っ越しできないので、地政学では隣国との関係が非常に重要視されます。
本書では「どうすれば自分の住む国や地域がサンドイッチの具にならずに済むか、という問題」と称して、世界史におけるサンドイッチ攻防戦がヨーロッパを中心に紹介されています。
歴史の基礎的な知識を頭に入れるのは骨が折れますが、プロローグともいえる前提を含めて本書に書かれているので、歴史のおもしろさも実感できます。
日本の地政学についても本書で取り上げられています。
日本と海を経て接しているのは、太平洋を挟んで遠く離れているアメリカとカナダを除けば、ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾という4ヶ国とひとつの地域です。
しかも北朝鮮とは正式の国交が成立しておらず、残りすべての国と地域とは領土上の懸念を抱えています。
さらに世界地図を、南半球を上にして、ユーラシア大陸と日本列島、太平洋との位置関係を眺めると、ロシアや中国が海路で太平洋に出ようと思うと日本列島がとてつもなく邪魔な存在になっていることもわかります。
これらを考慮して、日本という国を地政学的な現実だけから定義づけた次の言葉を読むと、いかに特異な条件下におかれた地域なのかが理解できます。
周辺の国々のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出ていく障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である。
日本の同盟問題、沖縄に集中している基地の問題についても、リアルな視点で著者の考えが披露されています。
普段はなかなか馴染みのない「地政学」という学問の視点で世界を見たときに何がわかるのか、その入門書として本書は読みごたえがあり、非常におもしろい作品です。
本書についてはこちらので詳しくご紹介しています!
『復活への底力』
著者は2021年1月に脳出血を発症し、大学の学長を休職することになります。
身体と言葉の障害が残るなかで懸命のリハビリに取り組み、学長への復職を目指した著者の経験が本書で詳細につづられています。
医師やリハビリのスタッフ、家族の存在が著者の気持ちを奮い立たせ、同時に著者のふるまいや前向きな姿勢が周囲の人たちに与えた影響も関係者のコメントから伝わってきます。
19世紀にチャールズ・ダーウィンが『種の起源』で提唱した進化論のキーワードである「運と適応」を信奉するダーウィニストである著者は、「何が起こるか予測できない世の中で、どんな事態に直面するかは運次第であり、人間にできるのは適応だけである」と語ります。
運とは、適当なときに適当な場所にいること。
適応は、川に流されてたどり着いた先の場所でベストを尽くすこと。
「自分はなんて不幸なんだ、なんて不運なんだ」と嘆くことなく、事実をありのままに見つめ、その変化に適応していく著者の言葉から学ぶことは山ほどあります。
病気と向きあっている方や困難に見舞われている方はもちろん、自分の生き方に悩んでいる方にも著者の言葉は一歩を踏み出すきっかけになるはずです。
『教養としてのローマ史入門』
ローマの物語を一度は書いてみたいと考えていた著者が、『カラヴァッジョの秘密』をはじめ、西洋美術の書籍を翻訳されている上野真弓氏と一緒につくり上げた作品が本書です。
ローマで出会ったバロック芸術に衝撃を受け、それ以来30年以上の年月をイタリアで過ごしてきた上野氏。
本書には、上野氏によって撮影されたローマ史に残る数々の美術品の写真が掲載されており、実物の雰囲気を味わいながらローマの歴史を楽しむことができます。
古代ローマの誕生からイタリアの近代、現代までを14人の人物に焦点をあてながら紡がれるローマ史は、ローマについての断片的な知識しか頭に入っていない方にとって既存知が組み合わされ、ローマのことがもっと好きになる内容です。
古代ローマのカエサル、アウグストゥス(オクタヴィアヌス)、そのあとのネロや五賢帝の時代はもちろん、「世界の修復者」として名を残すアウレリアヌス、中世のローマ教皇レオ4世、ボニファティウス8世、ルネサンス期のユリウス2世、ラファエッロ、ミケランジェロなど時代を超えて世界中に知れ渡っている人物が取り上げられています。
本書のユニークな点は、各時代の魅力的な人物に注目するだけでなく、ローマの栄枯盛衰を人口の推移で客観的に紹介しているところにあります。
歴史の本を読んでいると、後世に名を残す人物のふるまいに目が行ってしまい、その時代に生きた人々の生活水準や経済事情は記憶に残りにくいことがあります。
本書は各時代について、国力の尺度の1つである人口を含めて概観したあと、主要人物に目を向けてもう一度それぞれを語る形式です。
頭の中で復習しながら読み進められ、記憶にも定着しやすいのでおすすめです。
『ぼくは古典を読み続ける』
本書は2018年~2019年に光文社でおこなわれた著者の古典講義がベースになっています。
光文社古典新訳文庫から『種の起源』『ソクラテスの弁明』『地底旅行』『市民政府論』『歎異抄』を選書し、各作品がうまれた時代背景や作者の人となりを解説しながら、著者がそれぞれの古典作品のおもしろさを語ります。
無限とも感じられる知的バックグラウンドから飛び出す各作品の歴史を読むと、断片的な知識が頭の中で組み合わされ、新たな地平を目にしたような感覚を覚えます。
講義での質疑応答も収録されており、対象となった作品を参加者の方々が熟読し、著者も「とても楽しかった」と書いているほど興味深い対話を読むことができます。
本書で取り上げている5冊の古典に関連する書籍についても、各章の終わりにブックガイドが掲載されています。
本書を読み終わる頃には、読みたい本がたくさん増えていることは間違いありません!
おわりに
今回は、出口治明のおすすめ名著をご紹介しました。
知識をインプットし、自分の頭で考え、自分の言葉でわかりやすく相手に伝えることの素晴らしさが伝わってくる作品ばかりです。
ぜひ読んでみてください!
「アマチュア読者の楽しい読書会」を開催しています。
読んでおもしろかった本について楽しく語りあう場なので、ご興味のある方はこちらもチェックしてみてください!
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