こんにちは、アマチュア読者です!
今回ご紹介するのは、合戸孝二『執念 覚悟に潜む狂気』です。
ボディビルダーとして活躍されている著者は、その凄まじい量と質のトレーニングで、日本のボディビル界に広く知れ渡っています。
最近は筋トレYouTuberがたくさん活躍していて、さまざまなトレーニングが紹介されています。
わたくしアマチュア読者は筋トレ初心者で、トレーニング動画をいくつか観ていて「キツそうだなぁ」と思っていた中で、なかやまきんに君のYouTube動画で「ラスボス」「狂気の男」と呼ばれていたのが合戸さんでした。
ダブルスプリット
もともとジムで体を鍛えていた著者は、地元で開催されていたボディビル大会を観に行ったときに衝撃を受け、その世界の魅力に引き込まれたといいます。
大きな大会で上位の成績を残すことを目標に、ボディビルに向いているとはいえない体格だと考えた著者は、いかに筋肉量を増やすかに焦点を当ててトレーニングに打ち込むようになります。
そこで試みたのがダブルスプリットです。
ダブルスプリットとは、1日2回トレーニングをすることを指します。
スポーツでいう二部練のようなものなのですが、問題はどうメニューを組んでいくかです。
例えば背中のトレーニングをした後は肩甲骨周辺がほぐれて、胸のトレーニングをするのに非常に良い状態になるといいます。
部位を変えながら、バランスよく筋肉をつけるというと比較的楽にできそうな気がしてしまいますが、著者の場合は「いかに筋肉を大きく発達させるか」を常に考えてメニューを組んでいたといいます。
筋トレ経験が長いボディビルダーも、著者のジムに行くと見慣れない機具を目にして、その使い方を聞いて考え抜かれたトレーニング方法に舌を巻くといいます。
合戸氏がダブルスプリットを始めたとき、すでにボディビルが職業と言えるまでに腹落ちしていたため、朝から晩まで1日のすべての時間をトレーニングに費やしていました。
朝5時に起きてトレーニングの準備をして、6時から開始するというストイックさ。
10時ごろまで4時間みっちりトレーニングをして汗を流したら、そのあと減量期には屋外で日焼けをします。
食事内容はいたってシンプルな和食膳で、ご飯に味噌汁、焼き魚、納豆は1パックだけ。
その頃はプロテインも飲んでいましたが、当時は非常に高価だったので、基本的には粉ミルクで代用していたそうです。
粉ミルクを選ぶときは、店でありとあらゆる粉ミルクの成分表示を見比べ、最も脂質の含有量が少ない商品を選び愛飲していたといいます。
日焼けが終わったら14時から18時までは2度目のトレーニングで合計8時間、1日の3分の1をトレーニングに費やしていたことになります。
スポーツの経験がある方ならわかると思いますが、質と量を両立したトレーニングを毎日継続して実施することだけでもゾッとします。
しかも試合の前には、筋肉を少しでも美しく見せるために減量するのですから、その過酷さは半端なものではありません。
著者のボディビルに何を求めているのかは、次の言葉から垣間見ることができます。
目指しているのは、気持ち悪い体。『合戸は使っている』は最高の誉め言葉。
なんということでしょう。
トレーニングを中断していた時期
合戸氏は一度トレーニングを中断していた時期があったそうです。
その理由は、当時付き合っていた真理子夫人に夢中になっていたため、のめり込んでいたはずのボディビルのことをすっかり忘れてジムにも行かなくなってしまったといいます。
このあたりは、何かにのめり込んだら一直線に突き進む著者の性格が現れるエピソードですね。
著者の妻である合戸真理子夫人は、ボディビルの知識ゼロのところから著者のトレーニングを献身的に支えてきたといいます。
本書には著者のトレーニングの様子を映した写真が多く掲載されているのですが、真理子夫人の補助があってこそ100%の力を出し切れていることが伝わってきます。
鬼気迫る著者の形相と、冷静でクールな面持ちの真理子夫人の表情のコントラストも鮮やかです。
トレーニングにのめり込み、世界大会で上位入賞を目指していた著者ですが、あるとき目に異常を感じます。
診察の結果、いますぐトレーニングを中止してステロイドを使用した治療を行わなければならないと医師に言われます。
トレーニングを中断することはもちろん、ステロイドはボディビルで禁止されている薬物であるため、治療をしながら大会に出場したとしても薬物検査で陽性になってしまう可能性があります。
それだけでなく、著者は薬物を使うことなくナチュラルな体で大会に臨みたいという固い決意を持っていました。
このときに著者がとった行動には、本書のタイトルにあるとおり「覚悟に潜む狂気」があらわれています。
気になる方は、ぜひ手に取ってみてください。
おわりに
今回は、合戸孝ニ『執念 覚悟に潜む狂気』をご紹介しました。
ボディビルに魅せられて、常軌を逸したトレーニングをいまでも続ける著者の覚悟が本書の行間からにじみ出ています。
巻末には、東京オリンピックで柔道男子代表の監督を務め、史上最多の金メダル5個をもたらした井上康生氏と日体大体育学部教授で「バズーカ岡田」としてYouTubeでも活躍する岡田隆氏との鼎談も掲載されています。
オリンピック指導者も一目置く著者のトレーニングとその生き様が詰まった熱意あふれる一冊です。
ぜひ読んでみてください!
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