こんにちは、アマチュア読者です!
今回ご紹介するのは、せなけいこ『ねないこはわたし』です。
本書は絵本作家として名を馳せた著者の自伝です。
『ねないこ だれだ』『にんじん』『もじゃもじゃ』『めがねうさぎ』『ふうせんねこ』など、数々の人気絵本を生み出した著者の絵本にお世話になった方は多いと思います。
著者の名前に記憶がなくとも、その特徴的な貼り絵で編まれた絵本は強く印象に残っているかもしれません。
本書『ねないこはわたし』では、彼女がどのようにして絵本作家になったのか、どんな思いで作品を作り続けてきたのかが語られています。
著者が温かいまなざしで語りかけてくれているかのように感じられる文体で、心がほっこりします。
しかし、絵にかける著者の熱意には驚かされもします。
子どもの頃に宝物にしていた『おもちゃ箱』を手掛けた絵本作家の武井武雄氏に19歳で師事するのですが、「弟子にしてください」と直接頼みこんでいます。
「絵を趣味でするのですか。本気でするのですか?」と武井先生に聞かれて、著者は「一生の仕事だと思っています」と答えたそうです。
働きながら絵の勉強をしていたため、武井先生のもとに絵を持っていけるのは月に一度くらい。
先生から褒められたことはなく、「色が濃い」「形がくずれている」「デッサンがよくない」と批評され、気持ちも何もぺちゃんこになって家に帰る。
それでも、日本一の先生なのだから、どんなことがあってもしがみつこうと心に決め、著者は「ここでダメなら一生ダメだ」という気持ちで懸命に絵を描きました。
その苦闘の日々が、のちの貼り絵を基調とする絵本につながるのです。
あるとき「子どもにお手製の絵本で読み聞かせをしている」と出版社の人に話したところ、話が進んで同時に4冊も出版できることになります。
『にんじん』『もじゃもじゃ』『いやだいやだ』『ねないこ だれだ』が著者の最初の絵本で、絵本作家になりたいと志して絵の勉強を始めてから18年が経っていました。
本書『ねないこはわたし』は、貼り絵の絵本ができるまでの創作秘話や人気絵本の裏話、著者の絵本に込めた思いがよくわかる内容の作品です。
本書を読んだあとにあらためて著者の絵本を読むと、より印象深く感じられます。
著者の貼り絵も数多く掲載されていて、楽しく読み進められるところも素晴らしいです。
ぜひ読んでみてください!
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