【貯金の問題は実行の如何である】本多静六『私の財産告白』

暮らしの教養

こんにちは、アマチュア読者です!

今回ご紹介するのは、本多静六私の財産告白です。

本多静六(1866-1952)は山林を専門とする学者で、とりわけ造林学に対する関心が深く、明治神宮の森、東京都水源林などの造成や、日比谷公園、大宮公園をはじめとする全国の公園の設計に携わりました。

その功績から公園の父と呼ばれ、現在でも彼が設計・改良に関わった公園が全国に残っています。

学者として優れた業績を残した本多静六ですが、莫大な財産を築いた大資産家としても知られています。

本書『私の財産告白』では、本多静六が経済的に厳しい家庭で生活を営む身から、大資産家として名を残すまでにおこなった蓄財方法が紹介されています。

著者が84歳のときに出版された作品であり、財産や金銭についての真実が赤裸々に語られています。

どうすればお金に振り回されずに楽しい人生を送れるのか

給与が上がらず、なかなか貯金が増えないがどうすればよいのか

歴史に名を残す資産家が自分の財産に対して考えていることを知りたい

こういった悩みを抱えている方には本書がおすすめです。

「学業に勤しむためにはお金に振り回されてはいけない」

本多静六は9歳のときに父を亡くし、百姓や米搗きをしながら勉強をしていました。

苦学して東京山林学校(東大に匹敵する学力を要する学校)を首席で卒業した後、私費でドイツに留学して財政経済学を学びます。

そこで師事したドイツ人教氏授ブレンタノ氏から、学業に勤しむためにはお金に振り回されてはいけない。貯金だけでは蓄財は進まないので投資にも取り組むべきだと勧められます。

本人も資産家であったブレンタノ教授の蓄財に関する薫陶を受け、著者の資産に対する考えは大きく変わったといいます。

四分の一天引貯金法

帰国後、著者は東京大学の教授に就きますが、「東大教授なんだから高収入に違いない」と周囲が寄ってきて居候となり、家族を含めた9人を養わなければならない状況に陥ってしまいます。

このような境遇のなかで、著者は貧乏を圧倒すべく、四分の一天引き貯金法という手法を使って愚直に蓄財を続けたと語っています。

給与の四分の一(25%)を先に貯金し、残りの手取り金額で生活する。

ボーナスなどの臨時収入はすべて貯金する。

数式で表すと以下のようになります。

貯金=通常収入×25%+臨時収入×100%

誰でも実践できそうなシンプルな方法で、同様の考えはお釈迦様がお経の中で説いており、江戸時代では松平定信や二宮尊徳などが奨励してきた貯金法だといいます。

著者はどのような状況でも、この四分の一天引き貯金法を継続することで着実に貯蓄額を増やしていきました。

好景気は勤倹貯蓄、不景気は思い切った投資

著者は貯金だけではなく、蓄財したお金を投資に回して堅実なリターンも得ていました。

本書では具体的な投資方法について言及はされていませんが、好景気のときは貯蓄に力を入れて投資は最小限に、不景気のときは熟慮の上で思い切った投資をおこなう方針で、著者は資産を増やし、配当金や利子もあわせて巨額の富を築きました。

40歳にして貯金の利息が本業以上になり、読書に十分に楽しみ、海外旅行も19回に及んだといいます。

しかし資産は大きく増えたものの、それを使うとなると蓄財するときよりも大変だったと著者は語っています。

60歳のとき、多くの資産を次世代に相続するのは害悪であると考えた本多静六は、老後に必要な最低限の資産を手元に残し、あとはすべて寄付してしまったといいます。

凡人には考えられないような行動ですが、人生即努力・努力即幸福を人生観としていた本多静六は、肉体的にも精神的にも衰えを見せずに仕事を続けたのです。

副業のすすめ

著者は給与が少なく、四分の一天引き貯金法を実践してもなかなか資産が増えないと悩んでいる人に対して、副業を勧めています。

経済的にに苦労しなくて済むように、本業の支障にならない範囲で収入を増やすことを著者は強く意識していました。

著者は毎日400文字の執作業をひたすら継続し、生涯で370冊以上の著書を刊行しています。

年末年始は十分な執筆時間を確保できないこともあったようですが、その後の数日で遅れをカバーして乗り切ったといいます。

継続するうち、次第に執筆が捗るようになり、1日600文字のペースで書き進めることができたと語っています。

執筆活動のスキルが向上し、報酬として原稿料も入るようになったというのは「継続は力なり」を体現したエピソードです。

おわりに

今回は本多静六私の財産告白をご紹介しました。

著者の蓄財にも同じことが言えますが、継続することの重要性は多くの人がわかってはいるものの、「言うは易し行うは難し」という言葉が表すとおり、それを実行できる人間は少ないものです。

やるべきことを行動に移し、何が起ころうとも継続する本多静六の姿勢は凡人にとっても大いに参考になると思います。

シンプルな貯蓄法を愚直に続け、コツコツ執筆する。

誰にでもできそうなことのように思われますが、理解することと実現することの間には千里の逕庭があるのだと本書を読んで痛感しました。

時代を越えて語り継がれる人物というのは、困難であっても当たり前のことを淡々と積み重ねることができる素養を持っているのでしょう。

本多静六は専門である造林学を通じて、全国の公園の設計や造園に貢献したことだけでも多大なる功績を上げましたが、蓄財においても模範となる手法を体系的に確立し、大資産家として成功しました。

本書が刊行されて70年以上が経過していますが、その価値は減ずるどころかますます高まっています。

この機会にぜひ読んでみてください!

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