【おすすめの行動3選】アンデシュ・ハンセン 『スマホ脳』新潮新書

サイエンス

こんにちは、アマチュア読者です!

今回ご紹介するのは、アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』です。

スウェーデン生まれの精神科医で、患者と向き合いながら執筆された本書はスウェーデンでベストセラーとなりました。

日本でも2020年に出版され、ロングセラーとなっています。

「スマホ脳」というキャッチ―なタイトルが示しているとおり、私たちがスマホを使うと脳にどのような影響が生じるのかを様々な研究結果を引用して紹介しています。

スマホの使い過ぎに警鐘を鳴らし、日々の行動を振り返るよい機会を与えてくれるのが本書です。

本書を読んで特に印象に残ったのは、私たちの脳が現代社会に順応できていないということでした。

人間の脳は1万年以上進化しておらず、インターネットやスマートフォンが日常的に使われる社会を経験してきませんでした。

人類が文字を使い始めたのは約5千年前だと言われています。

ネット社会に突入したのが1990年と考えると、その期間の割合は1%未満です。

スマホを使い続けると脳はどうなってしまうのか。

いまから現状に合わせた研究を始めるとしてもこの結果が出るのは未来の話です。

私たちは過去の研究から、その傾向を把握し、健康で豊かな生活を送るために上手にスマホと付き合っていく必要があります。

今回は、本書を読んだ後に実践してみて良かったオススメの行動を3つご紹介します。

その① 食事のときはスマホを遠ざける

家族と食事をしているときやカフェで友達と話している最中にスマホを取り出されると、気が滅入ることはないでしょうか。

自分が相手より優れているわけでも偉いわけでもないのに、会話がつまらないと思ってしまうことはないでしょうか。

本書で紹介されている研究では、スマホが会話に与える影響がわかります。

約30人に知らない人と10分間自由に話をしてもらったそうです。

スマホをテーブルに置いた場合とそうでないときでは、相手を信用しづらく共感しにくいという結果が出たといいます。

このとき、スマホはただテーブルの上に置いてあっただけで、手に取ることは許されていなかったことは特筆すべきことです。

視界にスマホがあるだけで、会話がおもしろくなくなってしまうのです。

30人だとサンプルとしては少ないかもしれません。

著者は別の研究も紹介しています。

友人とのディナーの感想を300人に調査した研究も、同じ傾向の結果を示しました。

被験者の半数は、ディナーの最中に1通メールが届くからスマホをテーブルの上に置いておくようにと指示されました。

食後、スマホがそばにあった被験者はディナーはいまいちだったと感じたといいます。

たかが1通のメールでディナーがつまらなくなるのだろうかと考えてしまいますが、スマホを手に取りたいというドーパミン報酬を抑えるために、限りある集中力が使われてしまいます。

その結果、会話についていけなくなってしまうのです。

この研究結果は、個人的な経験に照らし合わせても腹落ちしました。

そこで本書を読んだ後、家族と食事をするときはスマホを目の届かないところに置くようにしました。

それまでは食事中でも何気なくSNSやネットニュースをチェックしていましたが、スマホに注意が向かなくなることで家族との会話に集中でき、食べ物を咀嚼して味わう時間が増えました。

食べながらスマホをいじるのか、食べ物を味わいながら会話を楽しむのか、わたしには後者の方が豊かな経験だと実感しています。

その② 寝る前はスマホを見ない

スマホやパソコンのスクリーンからはブルーライトが発光されます。

本書にも書かれていますが、ブルーライトには、眠りにつく時間を身体に知らせるメラトニンというホルモンの分泌量を抑えるはたらきがあるといいます。

メラトニンは脳内の松果体という分泌器で合成され、日中は分泌量が少なく、夕方になると増えていき、夜に最多になります。

光を浴びすぎるとメラトニン分泌にブレーキがかかり、身体はまだ昼間だと勘違いしてしまいます。

人間の目の中には、ブルーライトにだけ強く反応する細胞が存在し、脳に「メラトニンを作るのをやめろ!」と指示を出します。

このため、夜にスマホを見てブルーライトを浴びすぎると、メラトニン分泌が減るので睡眠が妨げられてしまいます。

わたしは就寝前にスマホを見る習慣がありましたが、『スマホ脳』を読んで、基本的に就寝1時間前からはスマホを手に取ることをやめました。

その結果、寝つきが良くなっただけでなく、目覚めもすっきりして朝から気分よく生活できるようになりました。

不眠に悩んでいる方だけでなく、朝活を充実されたい方にもおすすめです。

その③ 運動をする

本書では、「運動というスマートな対抗策」というタイトルで、1章分が運動と脳の関係に割かれています。

スウェーデンでは、大学生を対象に負荷の高いトレーニングをするグループと負荷の低いトレーニングするグループを分けて、週に3回、2週間のトレーニングを行う研究がされたそうです。

その結果、トレーニングの負荷に関わらず不安の度合いが軽減されたといいます。

効果が顕著だったのがランニングだったそうです。

わたしはそれまで運動不足気味だったのですが、本書を読んでやる気を出しました。週2~3回、1回に20~30分程度ゆっくりしたペースで走ることを1ヶ月のあいだ続けてみました。

定量的に何かを測定したわけではないのですが、運動した後の爽快感だけでなく、その後の集中力が自分でわかるくらいのレベルで上がりました。

上記のように、不安の度合いが軽減されたことも関係しているのかもしれません。

ペースを上げて走ると翌日に筋肉痛や疲労感が残るので、継続するのであれば、「これならどこまでも走っていけそう!」というくらいの余裕を持つことをおすすめします。

わたしは一番効果があるとされるランニングを試みましたが、散歩やヨガ、ランニング、筋トレなど、どんな種類の運動であっても知能的な処理速度が改善されるということです。

身体を動かすことが脳の状態を健全に保つことにつながるのでしょう。

おわりに

世界保健機関(WHO)によると、現在10人に1人が不安障害を抱えているといいます。

著者の母国スウェーデンでは、大人の9人に1人が抗うつ薬を服用しているそうです。

日本でも精神的な不調を訴える患者が増加しており、本書を読むと、その傾向にはスマホをはじめ、インターネットを使う社会が深く関わっているのだと痛感しました。

スマホを持つことで、SNSで他者と間接的につながることができたり、買い物を指一本で済ませることができて非常に便利です。

ただ、いかにスマホと適度な距離をとって付き合うかがこれからの人類にとっての課題なのだと、本書を読んで改めて思いました。

そのコツは、おそらくみなさんが薄々感じている、言ってみれば当たり前のことばかりです。

『スマホ脳』を読むと、「このままだとやばい」と感じる人がたくさんいると思います。

デジタル社会では、便利なスマホを上手に使わないと、逆にスマホに使われてしまいます。

誘惑が多いこの世界を豊かに生きるために、著者は本書を通じてさまざまなアドバイスをしてくれます。

わたしはすぐに実践できそうなことを3つ選んで取り組んでみましたが、『スマホ脳』を読めば自分に合った方法が見つかるはずです。

ぜひ読んでみてください!

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