こんにちは、アマチュア読者です!
今回は、スエトニウス『ローマ皇帝伝』をご紹介します。
スエトニウスはローマ皇帝トラヤヌスやハドリアヌスに仕えた秘書官で、公文書や同時代における評判、風刺、落書きなどの幅広い情報源を利用し、ローマ歴代の皇帝たちの知られざる一面を描き出したのが本書『ローマ皇帝伝』です。
カエサル、アウグストゥス、ティベリウス、カリグラ、ネロといった歴史的に著名なローマの為政者12人の伝記が収められています。
彼らの人間性や性格、統治の仕方について詳細に記述されており、歴史的史料としてのみならず、歴史的な読み物としても楽しめる作品です。
『ローマ皇帝伝』で登場する人物
本書で扱われる古代ローマの為政者たちは以下の通りです。
ローマ帝国の歴史において初期を飾った皇帝たちが取り上げられており、現代でもネームバリューのある人物が多いです。
ユリウス・カエサル:帝政ローマの基礎を築いた人物
アウグストゥス:初代ローマ皇帝
ティベリウス:安定した統治
カリグラ:短命な治世で国庫は空に
クラウディウス:ローマ帝国の拡大に貢献
ネロ:芸術を愛した暴君
ガルバ:厳格な規律と正義を尊重
オットー:治世95日
ウィテリウス:栄耀栄華と残忍非道
ウェスパシアヌス:内戦を終結してローマ帝国を再建
ティトゥス:エルサレム包囲戦で有名
ドミティアヌス:独裁者のあらゆる権力を濫用
構成と内容
スエトニウスの記述方法は、どのローマ皇帝でもほぼ同じく、まず人物の祖先、血統、家柄からはじまり、本人の誕生にうつり、その前後に起こった前兆や星占いを述べます。
皇帝に即位するまでは時系列に記述され、ここまでがいわば序論となります。
本論では帝位に就いた後の内政や外交上の業績、公私の言動の事例が、おもに倫理的な観点から箇条書きにされます。
終盤では亡くなるまでの経緯が年代順に書き連ねられ、その前後には身体上の特徴も記述されます。
有名な逸話
①カリグラの暴君ぶり
カリグラは自分の馬を元老院議員に任命しようとしたといわれています。
彼の専制的で気まぐれな性格を象徴した逸話です。
②ネロの芸術愛
ネロは自らを偉大な芸術家であると信じ、詩や音楽、演劇に熱中しました。
彼がローマの大火を見ながらリラを弾いていたエピソードが有名です。
③クラウディウスの奇行
クラウディウスは食事中に突然寝てしまうことがあったと伝えられています。
彼は裁判中に突然笑い出すこともあったといいます。
こういった逸話は、皇帝たちの人間性や性格を浮き彫りにし、歴史的な背景を理解する上で彼らの人物像が生き生きと蘇ってくるような気持ちにさせられます。
スエトニウスの生涯と経歴
本書『ローマ皇帝伝』の著者であるガイウス・スエトニウス・トランクイッルス(Gaius Suetonius Tranquillus)は、古代ローマの歴史家であり、伝記作家です。
彼は紀元70年頃に生まれ、130年頃に亡くなったとされています。
スエトニウスはローマ属州のヌミディア(現在のアルジェリア)出身で、騎士階級の家に生まれました。
元来、ローマの学問や文化は、絶えず新しい刺激を受けながら活力を維持しました。
紀元前1世紀はキケロ、ウェルギリウス、ホラティウスなどに代表されるイタリアの出身者によって、1世紀はセネカ、クィンティリアヌスなど属州ヒスパニアの出身者により、2世紀になるとアフリカ出身者に受け継がれました。
哲人皇帝マルクス・アウレリウスの師で、2世紀最高の雄弁家と謳われるフロントもアフリカに生まれています。
スエトニウスは少年の頃、ローマで当時考えられる最高の教育を受けた後、法律を武器に法廷で活動しましたが、政界には進出しませんでした。
文人政治家として著名な小プリニウス(プルニウス・セクンドゥス)と親しく、経済的な援助や文筆活動の奨励を受けました。
スエトニウスはトラヤヌス帝とハドリアヌス帝の治世において秘書官として働いています。
特にハドリアヌス帝のもとでは、秘書として最高位にある文書係(ab epistulis)に就き、皇帝の布告、書簡、演説の起草を任務としていました。
しかし121年(一説には122年)に、ハドリアヌス帝は「自分の許可なくして妻サビアに対して、宮廷の礼儀作法の則を越えてなれなれしく振る舞った」という理由から、スエトニウスをはじめ大勢を更迭してしまいます。
秘書官を解任された後は文筆業に専念し、余生を研究と著述に捧げ、その生涯を閉じたといわれています。
おわりに
今回はスエトニウス『ローマ皇帝伝』をご紹介しました。
本書はローマ皇帝12人について、公文書や公式書簡などの堅い文献のみならず、当時の人々からの評判やゴシップ、落書きといった民衆が目にし、耳にする情報も収集したうえで編まれた伝記集です。
古代ローマに関心があり、「どのような人物たちがローマ皇帝として帝国を統治していたのか知りたい!」と考えている方には手に取っていただきたいです。
この機会にぜひ読んでみてください!
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