【これは読んでほしい!】哲学者・経済学者 J.S.ミルのおすすめ名著

読書まとめ

こんにちは、アマチュア読者です!

今回は19世紀の哲学者・経済学者ジョン・スチュアート・ミル(J.S.ミル)のおすすめ名著をご紹介します。

著者は1806年にロンドンで生まれ、『英領インド史』の刊行で知られる父ジェームズ・ミルのもと、幼少期から厳格な教育を受け、深い知的素養を身につけます。

父の友人でもあり、「最大多数の最大幸福」を追求する功利主義の提唱者ジェレミー・ベンサムの思想を発展させ、精神的な幸福の質にも重点を置く考えを尊重しました。

また、個人が他人に害を与えないかぎりにおいて、個人の行動は尊重されるべきであり、社会や国家による干渉は不要であると主張し、当時の西欧のみならず、日本においても明治以降に福沢諭吉をはじめ、多くの知識人に影響を与えました。

著者が19世紀に構想した自由」の概念は、色褪せることなく時代を超え、現代の政治思想やリベラリズム、人権思想に多大な影響を与えています。

著者の功績はそれにとどまらず、ジェンダー平等の先駆者でもあり、労働者の権利の保護や教育の機会拡大、政治参加の拡充といった社会改革も提唱しています。

より公正で平等な社会を目指し、幸福自体を目的としない生活からこそ幸福が得られるという価値観を大切にした著者の作品は、150年以上経過したいま読んでも汲み尽くせない英知にあふれています。

『ミル自伝』

本書は、著者みずからの成長と思想形成における葛藤や克服を語った自伝です。

著者は幼少期から厳しい教育を受け、3歳からギリシャ語、8歳からはラテン語を学んでいます。

教育のために、父であるジェームズ・ミルは自分が書きものをしていた同じ部屋、同じ机で著者に勉強させ、知らない単語が出るたびに執筆作業を中断してはその意味を答えていたといいます。

書物については、幼かった著者にとっては読むのが困難だったであろう作品を読ませ、それを口頭で報告させていました。

論理学や経済学に関しては、単に多くの知識を教え込むのではなく、著者自身に一から考えさせ、その難しさを十分に体感したうえでないと教えようとはしなかったのです。

それでも頭ごなしに勉強を押しつけられた訳ではなく、学習がある程度進むと著者はアレクサンダー・ポープの英詩を愛読し、みずから古典作品を参考にローマ政治史を編集するようになります。

こういった教育が著者の思想形成にどのような影響を与えたのかが、著者自身の言葉で語られており、非常に興味深い内容です。

20歳前後には生涯の目的や幸福を考える中で精神的不安定に陥り、深い虚無感に悩まされます。

幾冊もの愛読書に救いを求めても無駄に終わり、途方に暮れる日々をすごしたのち、著者は田園の風物や自然への愛に訴えかけるワーズワースの詩集に出会います。

ワーズワースは19世紀の自然詩人であり、自然のために自然を歌うことに生涯をささげた人物です。

自然の美に感嘆する感情の状態、その感情に彩られる思想の状態が表現されたワーズワースの詩を読み、著者は感情の教養にふれることで精神状態は回復に向かったといいます。

こういった著者の読書遍歴も詳細に語られているので、古典作品のブックガイドとしても参考になります。

本書では著者の思想が発展するにしたがって、功利主義や自由論の探求に力を注ぐようになる過程も描かれています。

妻となるハリエット・テイラーとの出会いが著者の人生観や女性の権利への関心に与えた影響についても語られ、著者の代名詞ともいえる『自由論』への彼女の貢献も言及されています。

著者の思想がどのように形成されていったのか、その中で抱えていた精神的な葛藤や悩みはどのようなものだったのかを垣間見ることのできる内容であり、著者の後半生における哲学的・政治的活動の背景を知る手がかりにもなる作品です。

また、著者の知的功績だけでなく、著者が実際に経験した教育を追体験できるので、育児や教育について考えるうえでも非常に参考になる古典の名著です。

『自由論』

個人の思想や言論の自由、社会が個人に対して行使できる権力の本質と限界について書かれたのが本書です。

自由と権力との闘争は、古代ギリシャ・ローマから現代にいたるまで、人間がつくり出す社会をつかさどる政治において、逃れることのできない永遠のテーマです。

統治者とその社会のメンバーとの関係は時代とともに変遷し、統治する側が一般の人々に対して独立の権力であることを必要なことと考えなくなる時代がやってきます。

統治者が選挙によって決まり、統治者の利益と意志が国民の利益と意志でなければならない社会では、国民が国民に対して圧政をおこなう怖れは全くないと考えられました。

しかし、フランス革命をはじめとする政治的転換期において民主主義が広く行きわたると、統治する人民と統治される人民は必ずしも同じものではないことが明らかになります。

人民の意志は、実際には人民の最多数の部分、あるいは最も活動的な部分の意志ということになり、これが社会の意志ということになります。

この社会は自己の命令を自ら執行することができ、誤った命令を執行した場合は社会的暴虐を遂行することになり、人々は様々な自由を奪われ、幸福を追求することができずに命を落とす場合も生じます。

個人の独立と社会による統制とのあいだを適切に調整するにはどうすればよいのか。

19世紀後半に著者はこの難問に立ち向かい、本書を執筆しました。

より良い社会を追求するうえで、著者はそれを構成する人間とは一体何かを深く考えています。

自由の名に値する本当の自由、人間の誤りを議論によって正すことの重要性、人間の目的といったトピックが扱われており、『自由論』は決して読みやすい作品ではありません。

しかし、現代においても解決していない「自由」の問題を考えるとき、本書は示唆に富む観点を与えてくれます。

読みやすい新訳も刊行されているので、こちらもおすすめです。

おわりに

今回は、19世紀の哲学者・経済学者ジョン・スチュアート・ミル(J.S.ミル)のおすすめ名著をご紹介しました。

著者の考え出した自由の概念や政治思想、幸福のあり方は現代にも影響を与えています。

読み返すたびに新たな発見が得られる古典の名著です。

ぜひ読んでみてください!

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