【これは読んでほしい!】小説家フランツ・カフカのおすすめ名著

読書まとめ

こんにちは、アマチュア読者です!

今回は、小説家フランツ・カフカのおすすめ名著をご紹介します。

フランツ・カフカは、旧オーストリア=ハンガリー帝国の領土であったボヘミアの首都プラーグ(現在のプラハ)で、1883年7月3日に生まれました。

父親のヘルマン・カフカはユダヤ系の商人で、小間物のおろし問屋として成功をおさめ、プラーグのドイツ人社会に仲間入りを果たした人物です。

戒律の厳しいユダヤ教の信奉者であり、厳格で高圧的なフランツ・カフカの父は、仕事におけるキャリアが物語るように意志強固、実利主義、そして現実的な性格の持ち主であったといいます。

フランツ・カフカは対照的に、神経が繊細で夢想家気質、正義感が強く芸術を愛する気質がありました。

これは聡明で心優しい女性だった母ユーリエの血筋から受け継いだものだったと思われます。

大学で法学を勉強し、25歳から半官半民の労働者傷害保険協会に勤務しはじめたフランツ・カフカは、持病の結核が悪化して退任するまでの14年間はたらき続け、昇進を重ねていきました。

職務に忠実だった一方で、カフカは仕事から帰ると小説の執筆に真剣に取り組みつづけました。

執筆活動と役所づとめとの二重生活は精神的な葛藤を生み、肉体的な過労も重なって不眠症に悩まされていたようです。

義務的な役所勤務から解放されて、イタリア、フランス、ドイツなどの好きな土地を気ままに旅行することがカフカにとっての気晴らしでした。

生涯独身ですごしたフランツ・カフカは、遺言として終生の友人マックス・ブロートに、『変身』その他の、生前に刊行された数編だけを残して未発表の原稿や日記、手紙はすべて焼き捨てるように伝えました。

しかしながら、自身も有名作家だったブロートは、亡き友カフカの遺志を実行しなかったばかりか、みずからの手で残された未発表の原稿を次々と編集して出版していきました。

もしも彼の見識と決断がなければ、今日のようにフランツ・カフカの作品が世界中で驚嘆と畏敬の念をもって読み継がれることはなかったのです。

『変身』不条理の代表作

ある朝、セールスマンのグレゴール・ザムザが不安な夢から目覚めてみると、自分がとてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気づくという衝撃的な冒頭で有名な作品です。

毒虫になっても意識は人間のまま、ザムザは日々の仕事の苦労を振り返りながら、家族の反応を気にしはじめます。

自分の気持ちを言葉で伝えることもできなくなり、コミュニケーションが断絶し、外見が変わったことで家族からは冷たくあしらわれる。

そんな理不尽な状況でザムザがとる行動を追体験すると、共感や同情、虚無感など様々な感情が去来します。

ザムザの家族の立場で読んでみても考えさせられます。

愛する者がザムザのように姿かたちを変えてしまったら、自分はどのように接するのか。

身近な人とコミュニケーションがとれなくなったら、何をするべきなのか。

本書のタイトルである『変身』という言葉は、数多くの解釈を可能にするキーワードだと思います。

グレゴール・ザムザは言葉どおり毒虫に変身したのか。

むしろ、ザムザだけが自分が毒虫だと気づいただけで、実は周囲の人も毒虫ではないのか。

あるいは、毒虫という言葉は何かのメタファーで、現代社会に潜む問題を暗示しているのか。

100ページに満たない短編小説でありながら、悲劇であり寓話的であり、風刺的でもある本書『変身』は、読むたびに解釈が変わる不朽の名作です。

悩みの多い現代社会において、ご自分が感じる孤独や不安を映す鏡として、本書を手に取っていただきたいです。

『カフカ短編集』20篇を収録

20世紀を代表する作家の一人であるフランツ・カフカは、「不条理文学」のパイオニアとして広く知られています。

その独特な世界観や抽象的な色の濃い物語は、多角的な視点で読めることから、今もなお世界中で読み継がれています。

難解とされるフランツ・カフカの文学ですが、本書に収められている20篇の短編小説は、短いものだと数ページで完結する作品が多く、読書の時間がなかなか取れない人でもスキマ時間に読み進めることができます。

カフカ作品についての解説書を読むのもおもしろいですが、まずは彼の作品そのものをじっくり読んでみてはいかがでしょうか。

想像の翼を羽ばたかせるほど、さまざまな意味を持つ物語として楽しめます。

本書は翻訳が読みやすく、解説も充実しているのでおすすめです。

冒頭の『掟の門』はわずか4ページの作品ですが、いきなりカフカの世界にどっぷり浸かることができます。

掟の門の中に入りたい男と、掟の門を守る門番のやりとりで構成されています。

掟を求めている男と、門の中にはさらにすごい番人が何人もいると語る門番。

ラストは衝撃的で、一度読むと記憶に刻み込まれる内容です。

個人的には、フランツ・カフカでまず思い浮かぶのが『変身』とこの『掟の門』です。

『掟の門』だけでもぜひ読んでみてください!

『カフカ寓話集』直筆のスケッチも掲載

本書『カフカ寓話集』はフランツ・カフカが生前に発表した短編作品や未発表の草稿、断片的な文章の中から選ばれた30篇が収録されています。

文章は平易な表現で、読書初心者でも無理なく読み進めることができます。

世の名声を願わず、常に謙虚だったカフカが、亡くなる前に親友に作品すべての焼却を依頼したエピソードはカフカ伝説と呼ばれています。

しかし本書に収められている作品を読むと、自作の価値を確信し、ひそかな名声をめぐって語られた内容が少なからず見られます。

プライベートも結婚も家庭も健康も捨て置いてしまうほど、書くことにのめり込んだカフカの心の内を垣間見ているような読書体験ができるのでおすすめです。

本書にはカフカ自筆のスケッチも掲載されています。

フランツ・カフカはペンや鉛筆で、ノートや日記、手紙、勤め先の官庁用紙などに彼の小説と同様、さまざまな解釈ができる象徴的な絵を数多く残しました。

作品のあいだにカフカの描いた絵を眺めるのも一興です!

おわりに

今回は、小説家フランツ・カフカのおすすめ名著をご紹介しました。

シンプルでわかりやすく、映像化しやすい作品に人気が集まる世の中ですが、カフカの作品は寓話的で抽象性が高く、不条理な内容が多いです。

何通りも解釈ができる小説というのは、自分で読むたびに解釈が変わり、それに気づいて自分という存在も変わっているのだと発見できるおもしろさがあります。

没後100年が経過しても、フランツ・カフカの作品の素晴らしさは色褪せず、時代が変わっても示唆に富むインスピレーションを受けることができます。

この機会にぜひ読んでみてください!

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