【江戸幕府将軍に捧げた九変五変の歴史観】新井白石『読史余論』

古典

こんにちは、アマチュア読者です!

今回は、新井白石読史余論をご紹介します。

本書『読史余論』(どくしよろん)は、江戸時代中期の儒学者である新井白石が、時の江戸幕府将軍、徳川家宣に対して日本の政治における権力者の系譜や時代ごとの政治的特徴などをまとめて献上した書物です。

単なる歴史叙述にとどまらず、史料の読み方や国としてのあり方、歴史に対する深い洞察を含んでおり、時代を越えて多くの人々に読み継がれています。

新井白石とはどんな人物か

本書の著者である新井白石(1657~1725)は、江戸幕府第6代将軍・徳川家宣の側近(ブレーン)として活躍した儒学者です。

朱子学にもとづいた道徳主義を重視しながらも、実証主義的な態度で歴史や社会を考察しました。

従来の神話や伝説に依拠した歴史叙述に対して異を唱え、事実や記録を丁寧に読み込み、歴史を合理的に再構成しようと試みたことは、本書を含めた新井白石の著作を読むことで強く感じられます。

特に天照大神や神武天皇などを神とはみなさず、人間的な存在として扱おうとした点は象徴的です。

また、外交政策では朝鮮通信使や琉球、オランダとの交渉に関わるなど国際的な視野も持ち合わせていました。

そんな白石が晩年にまとめた歴史考察が『読史余論』です。

新井白石が考えた天下の大勢「九変五変」

本書『読史余論』において新井白石は、日本の天下は九変して武家の時代になり、それがさらに五変して徳川の世になったと考えました。

九変については、幼少の天皇に対して摂政が開始された一変をはじめに、摂関政治が権勢をふるい、白河上皇が院政を敷き、武家の源頼朝が天下の権をとり、北条九代が執権政治で権力を維持し、後醍醐天皇が建武の親政をおこない、南北朝が分立して室町幕府が成立するまでを指します。

一方で、五変は源頼朝の父子三代からはじまり、執権政治、足利氏の北朝天皇擁立、信長・秀吉の治世、当世(徳川の世)が選ばれています。

日本の政治の歴史を大局的に捉え、その変遷について九変五変のポイントを抑えて整理している点は非常にわかりやすいです。

各転換期については複数の文献を比較考量して論じられており、先入観にとらわれず、事実に即してロジックを組み立てているので現代人でも違和感なく読める内容です。

おわりに

今回は新井白石読史余論をご紹介しました。

300年前に記された書物でありながら、その歴史観や為政者に対する深い洞察は、現代においても損なわれていません。

時代を越えて読み継がれている新井白石の歴史観を、この機会にぜひ味わってみてください!

なお、岩波文庫版では新井白石の文体により近い形で文章が校正されています。

わたしは途中で挫折してしまいましたが、新井白石の言葉をよりダイレクトに感じたい方はこちらがおすすめです。

 

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