【社会が市場化する中で求められる能力】ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』

暮らしの教養

こんにちは、アマチュア読者です!

今回は、ちきりんマーケット感覚を身につけようをご紹介します。

現在、多くの人がこれからの社会で求められるのは、どんな能力なのか?という問いを考えざるを得ない時代です。

グローバル社会、AI、先進国の中で日本が最も早く直面している少子高齢化など、不安要素は少なくありません。

本書では、人気ブロガーであるちきりんが、この問いに対する答えとして挙げる「マーケット感覚」について具体例を紹介しながら詳しく説明しています。

2015年に刊行されていますが、いま読んでもまったく内容が色あせていないことに驚きます。

「マーケット感覚」とは何か

たとえばあるとき、大きな金塊を見つけたとしたら、家族や友人に知らせたり、スマホで写真を撮ったり、重さを確認したりとテンションが爆上がりしますよね。

それは、人間にとって金塊には価値があると知っているからです。

しかし幼児や動物の足もとに金塊を置いても、触ったり舐めたりするだけで、すぐに興味を失ってしまうでしょう。

このように自分のすぐ近くに「価値あるもの」が存在していても、その価値を認識する能力がないと、「自分のまわりには何も価値のあるものがない」と考えてしまいます。

一流大学を卒業して大手企業に10年以上も勤めながら、「自分には特別な能力がないから、この組織にしがみつくしかない」と一蓮托生の思いで仕事をしている人は少なからずいると思います。

なかには、多忙な仕事の合間をぬって学校に通い、資格取得や外国語の勉強に励んで「市場で売れる能力を身につけよう」と頑張っている人もいるはずです。

しかしながらその姿は、自分の足もとにある金塊には目もくれず、「何か価値あるもの」を手に入れようと探し回る幼児や動物の姿に似ていると著者は語ります。

どんな分野であれ10年も働いたら「自分に売れるモノ」は必ずあるはずで、その人に足りないのは「価値ある能力に気がつく能力」なのだ。

著者は、この「売れるものに気がつく能力」「価値を認識する能力」マーケット感覚と呼んでいます。

本書で説かれる「マーケット感覚」は、一般の会社員から公務員、学者、医者から専業主婦、そしてアーティストからエンジニアに至るまで、金融や営業とは無縁の分野にいる人を含めたすべての人の働き方や生き方に深く関わる能力だといいます。

なぜ「マーケット感覚」が必要なのか

本書では、ビジネスについて考えるアプローチとして、論理的思考で順を追って分解して考える方法、マーケット感覚をフルに活用してリアルな現場をイメージしながら考える方法の2つを比較しています。

航空会社のANAを例にとり、「顧客が実際にサービスを利用する場面を想像力豊かに思い浮かべられれば、論理的思考だけではなかなか辿り着かない別のタイプの競合他社に気づくことができる」という著者の考えは、腹落ちする内容です。

最初は事業内容を分解しながら思考し、ある程度まで進んだところで今度は「ところでこのサービスを使う顧客は、何を求めているのだろうか?」と別の視点から考えてみる。

本書の企業分析事例を読むと、論理思考とマーケット感覚という2つの方向から考えることで、思考は一気に広がるのだと感じられます。

しかもこの2つの能力は、どちらも鍛えて伸ばすことができるのです。

論理的な思考というと、以前は生まれつき地頭がいい人が持つ固有の能力だと思われていました。

しかし現在では、方法論を覚えて思考訓練を重ねれば、誰でも論理的な思考力を高めることができると理解されています。

著者が「これからの社会で求められる能力」と考えるマーケット感覚についても、センスの要素が強いように見えますが、後天的に学んで身につけられるものだといいます。

素晴らしい価値を生み出しているものの、マーケットで評価されない商品やサービスがたくさんあり、人材についても同じことがいえます。

本書を読むと、「自分に足りないのはマーケット感覚だ」と気づけるかどうかで、見える世界が大きく変わるのだと感じます。

現在進行形で社会の市場化が進んでいく中で、マーケット感覚の重要性もいままで以上に大きくなっていくのであれば、学ぶ価値はおおいにあります。

「マーケット感覚」を鍛えるにはどうすればいいのか

本書では、思考を広げるツールとして、また市場化していく社会の中でその価値が高まっているマーケット感覚の重要性が、さまざまな具体例をまじえて説明されています。

そのうえで、著者はマーケット感覚を身につけるために有効な方法として、以下の5つを挙げています。

①プライシング能力を身につける

②インセンティブシステムを理解する

③市場に評価される方法を学ぶ

④失敗と成功の関係を理解する

⑤市場性の高い環境に身をおく

たとえば①については、日本の消費者は一物一価で商品の取引をおこなっているため、プライシング(自分の基準で、妥当と思える価格を付けること)をする機会に乏しく、「値札」や「相場」といった言葉に弱い傾向にあります。

「相場として妥当な値段なのか?」ではなく、「自分の価値基準では、いくらが妥当なのか?」というプライシング思考の重要性が説かれています。

コストを積み上げて値段を決める発想も批判されています。

なぜなら、コスト計算は供給者の発想であり、マーケット感覚で求められるのは需要者や消費者が妥当だと感じる価値を推定する力だからです。

①のプライシング能力について触れている部分を読むだけでも、多くの学びがあります。

「良い商品を世に出せば売れる」と考えるプロダクトアウト型の方は、①~⑤を読むと「良い商品」とはいったい何を指すのかを考え直すきっかけになると思います。

おわりに

今回は、ちきりんマーケット感覚を身につけようをご紹介しました。

多くの人が思っている「これからの社会で求められるのは、どんな能力なのか」という問いに対する著者の答えが本書には詰まっています。

社会が市場化していく中で、本書で説かれる「マーケット感覚」はこれからも必要であり続けると思います。

「マーケット感覚」の重要性だけでなく、その鍛え方も惜しげもなく紹介されているので、ぜひ読んでみてください!

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